DHで活躍する大谷翔平選手(写真:AP/アフロ)

マーケティング的動機から導入されたDH

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 指名打者制度(designated hitter=DH)とは、野球において、投手の打順に打撃だけをする別個の打者を置くルールだ。

 DH制は1973年からMLBのアメリカン・リーグで導入された。

 1970年代、アメリカン・リーグの観客動員は、ナショナル・リーグに大きく水をあけられていた。

【1970年】(カッコ内は1試合平均)
 ア・リーグ 1208万5135人(1万2433人)
 ナ・リーグ 1666万2198人(1万7140人)

【1971年】
 ア・リーグ 1186万8560人(1万2302人)
 ナ・リーグ 1732万4857人(1万7827人)

【1972年】
 ア・リーグ 1143万8538人(1万2305人)
 ナ・リーグ 1552万9730人(1万6745人)

 72年で言えば、ア・リーグで観客動員が100万人を超える球団は12球団中3つしかなかったが、ナ・リーグは9つもあった。

 ア・リーグ球団のオーナーたちは、ア・リーグの不人気は「貧打」にあると考えた。72年、ア・リーグの本塁打数は1175本、打率は.239、ナ・リーグの本塁打数は1359本、打率は.248だった。

 そこで、打撃で期待ができない投手の代わりに他の打者を打席に立てる「DH」をアスレチックスの名物オーナーだったチャーリー・フィンリーらが考案し、ア・リーグ全球団が賛同して導入にこぎつけたのだ。

 DHに関しては導入以来、「野球という競技を考えるうえでどうか?」という議論が長らく続いてきたが、もともとの出発点が「派手な打ち合いを増やして、多くのお客を呼び込みたい」というマーケティング的な動機だったことは、押さえておくべきだろう。