ドローンが戦争に与える影響が浮き彫りに
空の連携に不可欠なA-50は13機、ツポレフ95は約55機、ツポレフ22Mは57~58機しか配備されていないとされる。しばらくの間、ウクライナへのミサイル攻撃に支障が出るのは必至だ。
しかし米戦略国際問題研究所(CSIS)のミック・ライアン研究員(元オーストラリア陸軍少将)はオンラインメディア「インタープリター」への寄稿(6月2日付)で「プーチンの決意が砕かれることはない」と戦果の過大評価を戒めている。
「ウクライナはロシア国内の標的に対する長距離攻撃作戦を展開している。工場や石油精製所を攻撃することでロシアの軍事力低下を狙うためだ。ウクライナの攻撃は壮観だったが、攻撃の戦略的成果に対する期待は控えめにすべきだ」と釘を刺している。
しかし、それでも3つの効果が期待できるとライアン氏は言う。(1)ロシア軍は戦略航空資産の配備場所、爆撃機と関連基地インフラの防御方法を見直さざるを得なくなる、(2)ミサイルを搭載・発射できる爆撃機の数が減少する、(3)ウクライナの士気を高める――。
「ウクライナは支援国に対して、依然として戦闘状態にありロシアは苦戦しているというシグナルを送っている。ドローンが戦争に与える影響を改めて浮き彫りにした。少数の高性能兵器システムと、多数の安価な能力のバランスを取ることの重要性を示す教訓になる」という。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。