2025年5月11日、関東インカレ、男子5000m決勝での山口智規 写真/千葉 格/アフロ

(スポーツライター:酒井 政人)

1部は早大・山口が攻め込み、日本人トップを死守

 毎年、5月に開催される陸上競技の関東インカレ。今年は8~11日に相模原ギオンスタジアムで行われた。初日の男子10000mから激戦となり、今年の箱根駅伝出場校では早大、中大、城西大、東洋大、順大、日体大、法大、山梨学大、日大がいる1部(全16校)は臙脂のエースがぶっ飛ばした。

「調子が良かったのでスローペースになるのはもったいない。最初の100mで誰も出ないと察したので、いったれ、と。優勝を目指して、気持ちで攻めるレースをしようと思っていました」

 序盤で山口智規(早大4)がトップを奪うと、1000mを2分43秒で通過して抜け出すかたちになった。「キロ2分50秒ぐらいで押していける」と読んでいたが、強風に苦しみ、1800m手前でジェームス・ムトゥク(山梨学大4)に追いつかれる。ほどなくしてムトゥクがペースアップして、独走するかたちに。山口はヴィクター・キムタイ(城西大4)にも並ばれて、しばらくは2位集団を形成した。

 5000mはムトゥクが13分57秒、山口とキムタイは14分05秒ほどで通過。ムトゥクは後半も独走態勢を崩さず、28分06秒37で3連覇を達成した。2位はキムタイで28分31秒37、3位は山口で28分37秒82だった。

 気迫のこもったレースを見せて、日本人トップに輝いた山口だが、「自分で満足できる点数を与えられるような走りはできませんでした」と不満を口にした。

 2~3月にオーストラリア合宿を行い、「かなり充実した2カ月間」を過ごしたという。しかし、帰国後は「気候の変化」もあり、体調が上がらず、日本学生個人選手権10000mは11位に沈み、目指していたユニバーシティゲームズ日本代表を逃した。

 山口は競技者として「わがままでありたい」と思っていたが、伝統あるチームの駅伝主将となり、「自分の競技よりもチームで結果を残さないといけない」という気持ちが強くなったという。そのため今季最初の総力戦である関東インカレでは“結果”を求めて激走した。

「4月は自分としてもチームとしてうまくいかなかったんですけど、ここで気持ちを見せるレースができて良かったと思います。最低限の走りですが、自分の中でホッとしている部分がありますし、貪欲に上を目指していきたい」

 昨年の箱根駅伝は2区を1時間06分31秒の区間4位と快走。今年も2区で攻めの走りを見せたが、後半は失速して区間12位に終わった。それでもチームは総合4位に躍進して、今季は“頂点”を目指している。

「箱根の結果に満足している選手は一人もいません。新チームのミーティングでは、『絶対に総合優勝するぞ』という熱い話をしました。勢いのある新入生が加わり、僕の4年目にして今までなかった早稲田大学が見せられるんじゃないかなと思っています。トラックシーズンは勝負にこだわっていきたいですし、駅伝主将として、三大駅伝も結果を求めていきたいです」

 上位3人以外は集団でのレースとなり、山崎丞(日体大4)が28分53秒28で4位。野田晶斗(3年)と清水郁杜(4年)の法大勢が5位(28分55秒80)と6位(28分56秒58)に入った。

 山崎は今年の箱根駅伝で花の2区を任されるも区間19位。順位を3位から18位まで落とす苦い経験を味わった。しかし、2週間前の日本学生個人選手権10000mで4位に食い込むと、関東インカレでも結果を残した。

「最後の関東インカレなのでしっかり得点を稼ぐことに重きを置いてレースを運びました。連戦できつかったんですけど、4年生の意地と強さを見せられたのかなと思います。全日本大学駅伝選考会(5月24日)は4組目を走ることになると思うので、チームのために力を出していきたい。前回の箱根駅伝は非常に悔しい思いをしているので、しっかりとぶつけられるように準備していきたいです」