新教皇の路線はフランシスコの改革を深化させる

 レオ14世は女性の役割など教会内で最も分裂する問題については公の場でほとんど発言していない。前出のトンプソン氏は「フランシスコほどLGBTQ+のロビーへの歩み寄りに積極的ではないようだが、同性カップルへの非公式な祝福には穏やかな支持を示している」という。

 米フォーダム大学宗教文化センターのデービッド・ギブソン所長は米紙ニューヨーク・タイムズへの寄稿(5月8日付)で新教皇の路線は穏やかではあるが確実にフランシスコ改革を深化させるものであり、保守派との対立も引き継がれる可能性が高いと論じている。

 ギブソン所長によると、伝統主義のカトリック教徒、特にフランシスコに対する反対勢力の拠点だった米国のカトリック教徒は、フランシスコが権威を共有し、誰もが意見を表明できる、より包括的な教会を築くために行った改革を抑制し、覆すような保守派の教皇を切望していた。

「保守派が学ぶべき教訓は多様性の価値だ。これを受け入れることが多様性と複雑さを特徴とするグローバルな教会として成長し、1つであり続ける唯一の道」と説くが、難民や不法移民への嫌悪は米国だけでなく欧州にも広がる。

 政治同様、宗教界でも改革派と保守派の先鋭的な対立が続くのは避けられそうにない。

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。