いじめ対策、「大人の誤解」の数々
いじめに関係する人たち、特に子どもたちとの対話を重ねながら、小森さんには何が見えてきたのだろうか。それは、「学校のいじめ対策がいじめの現状とズレている」ということだった。端的に言えば、いじめが止められない原因は「大人の誤解にある」と小森さんは考えている。
小森さんの言う「大人の誤解」とは、どのようなものなのか。

例えば、けんか両成敗。トラブルがあった時、教師ら周囲の大人が当事者たちに互いに謝るよう促す対応だ。多くの学校が行っているが、結果的にいじめを助長させる可能性があると小森さんは言う。
両者に謝罪させれば、表面上は解決した形になる。「しばらく様子を見る」という形にして、その場を収めることもできるため、大人にとっても都合がよい。しかし、告げ口をされたと感じた加害者は、より陰湿にいじめるようになる。しかも、いっそう巧妙に、見つからないような方法で。「解決から遠のくだけです」と小森さんは言う。
その他の大人の誤解には、どんなものがあるだろうか。
被害者に対して発する「あなたにも直した方がいいところない?」「いやだって言わなかったの?」という言葉についても、小森さんは問題視する。
「被害者に責任の一端を押し付ければ、仲介する大人にとっては背景を探る手間が省けます。でも、子どもの利益にはなっていない。社会で散見される『被害者責任論』が学校にも入ってきている」