手薄な「加害者」への対応
小森さんも、加害者への対応に改善が必要だと訴えている。
問題が起きたとき、被害者へはメンタル面へのケアが行われている一方で、加害者へのカウンセリングなどはあまり実施されていない実態がある。加害者に対して行われるのは、「保護者への報告」や「いじめられた児童生徒やその保護者に対する謝罪の指導」がほとんどだ。その繰り返しに、いじめ防止の効果はあるのだろうかと小森さんは考えている。
いじめ防止対策推進基本法が公布された2013年度、いじめの認知件数(小中高の合計)は約18万6000件だった。ところが、2019年度は約61万2000件。減少するどころか増加の一途をたどった。2023年度も過去最多を更新するなど高水準が続いている。
いじめに対する処方箋については、多種多様な意見がある。ただし、今まで通りの対策を続けても、いじめは減らない。その事実は上掲の各種統計が教えてくれている。だからこそ、小森さんは「まずは、いじめに対する『大人の誤解』を解くために、子どもたちの声にもっと耳を傾けよう」と訴えている。
「あるイベントで、いじめを受けているという中学3年生と出会いました。その子が、この本のタイトルを見るなり目をキラっと光らせました。そして言ったんです。『そうそう、これなんだよ!』って」
主な相談窓口
▽いのちの電話
(0570)783556(午前10時~午後10時)
(0120)783556(午後4~9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)
▽こころの健康相談統一ダイヤル
(0570)064556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)
▽よりそいホットライン
(0120)279338(24時間対応)
岩手、宮城、福島各県からは(0120)279226(24時間対応)
益田 美樹(ますだ・みき)
ジャーナリスト。英国カーディフ大学大学院修士課程修了(ジャーナリズム・スタディーズ)。元読売新聞社会部記者。著書に『日本語教師になるには』『チャイルド・デス・レビュー: 子どもの命を守る「死亡検証」実現に挑む』(共著)など。調査報道グループ「フロントラインプレス」所属。


