中核部品は米国製、国産化は途上
C919は2007年から開発が始まり2023年に上海―北京便で初の商業運航を実現。2024年末までに、中国東方航空で10機、中国南方航空で3機、中国国際航空で3機と計16機が導入されている。年内にC919の生産は75機に増え、2029年までに年産200機を目標としている。
だがC919がボーイングの代替機になりうるか、この増産計画が順調に進むか、というと、今の厳しい米中関税戦争がつづけばそれは難しい。
なにせC919のコアな部品の多くが欧米製品に依存しているからだ。なかでも航空機の心臓であるエンジン、電力系統、気象レーダー、飛行制御システム、燃料システム、フライトレコーダー、火災検知システム、着陸補助装置システムなどに米国製部品が含まれている。
中国メディアによれば、2028年には国産化率が80%を超える国産エンジン「長江1000A」のテスト導入が完了する。つまり、現段階のC919エンジンはまだ純国産とは言い難いものなのだ。機体全体で国産化率90%以上を実現するのは2035年という。
今年から米国製部品が入手できなくなれば、C919の純国産化計画も増産計画も頓挫しかねない。
C919の現段階の性能にも問題が指摘されている。C919は欧米基準の耐空証明書を取得できていない。C919は開発に15年、200億ドル以上を研究につぎ込んだが、航空機のフラップと水平尾翼用に購入したカーボンファイバー素材の強度が不合格であったことが発覚し、結局ボーイングやエアバスが2017年以降に段階的に廃止してきた従来のアルミニウム合金を使っているなどの問題が一部で指摘されてきた。だが当局の情報統制によって、こうした指摘の声は削除されている。
国内の乗客の評判、噂も都合の悪いものは削除されている。たとえば2023年、中国東方航空のC919の試験導入中、頻繁に欠航やフライトの振り替えがあった。理由は明らかにされていないが、エンジン系の故障のケースもあったとされる。
2024年に、C919(東方航空、上海紅橋発成都行き)に乗った乗客は、離陸前に、客室乗務員からペーパータオルを渡されたという。離陸すると座席上の手荷物収納のところから水滴が落ちてくるので、それをふくためだった。
情報が統制されている中国では、C919の本当の意味での安全性、性能についての信頼度がいまひとつであり、2024年の英国ファーンボロー・エアショーでも、C919は国際的な受注を獲得することができなかった。ベトナム航空は一時、機材不足のためC919の購入を検討していたが、結局、先進国が耐空証明書を発行していないことを理由に、購入を見送った。
もちろん米国側、ボーイング社側への打撃も決して小さくない。