経営難の中国航空業界に打撃
まず、中国の航空会社は依然として厳しい経営状況にある。コロナ禍の影響で世界中の航空会社は厳しい赤字を被ったが、2023年にはおおむね回復している。だが、中国3大航空会社の中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空は2024年まで5期連続で赤字だった。
赤字幅は大きく改善傾向にあるとしても、地政学的な圧力をうけて国際線は2019年の水準を回復しておらず、国内線は過当競争や内需縮小によるチケットの廉売、使用機体の大きさと需要のミスマッチなどで利益が出にくい状況が続いている。

ボーイングの旅客機は中国が輸入する米国産製品の中では単価が最も高いものの一つだ。1機1億ドル前後はする。中国はボーイング社から旅客機をまとめ買いしているから、ディスカウント価格であったとしても6000万ドルくらいはするだろう。
そのうち3~5割を前金として支払っていたとして、少なくとも前金は返って来ない。トランプが言うように契約違反による損害賠償訴訟などが起こされる可能性もあるだろう。そうなると、その航空会社の米中都市間の運航便にも影響がでるかもしれない。
この3社は2025年から2027年までの間にそれぞれボーイング機を53機、81機、45機購入(納入)する契約だったから、前金あるいは違約金による経営への打撃は想像を上回るだろう。
また、ボーイング社の部品をこれまでのように調達ができない、となると、中国の航空会社が今現在運航しているボーイング機のメンテナンスや修理にも支障をきたすかもしれない。今年3月の時点で、中国の航空会社14社すべてがボーイング機を導入している。今回、習近平政権の政策に従って真っ先にボーイング機を返品した厦門航空は、実は保有機の9割以上がボーイング機だという。
ボーイング機がなくても、中国国産旅客機C919があるではないか、と中国は盛んに喧伝しているが、実はC919にも大きな問題がある。