4.上院情報委員会の公聴会における発言
CIA長官・国家情報官発言と米国防総省による調査
本項は、BBC「トランプ氏や情報機関トップ、チャットでの情報漏洩の影響は小さいと主張」(2025年3月26日)を参考にしている。
(1)CIA長官・国家情報官の発言
2025年3月25日、軍事情報流出めぐり上院情報委員会の公聴会が開かれた。
ジョン・ラトクリフCIA長官は、ゴールドバーグ氏が報じたような、軍事作戦における武器や標的、タイミングに関する具体的な協議は、チャットでなされたとは認識していないと発言し、今回の情報漏洩を、ものすごいミスだと思うかと問われると、「いいえ」と答えた。
トゥルシー・ギャバード国家情報長官は、「機密情報は一切」漏れていないと繰り返し主張。
情報の「不注意な公開」と「悪意ある漏洩」は別だとした。
野党・民主党の委員らは、問題のチャットに関わった人々を、いい加減で無能だと批判し、「プロのすることでは全くない。謝罪もない」「このミスの重大さを認めてもいない」などと非難した。
一方、今回の情報漏洩の中心人物とされるマイク・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は3月25日、トランプ氏とホワイトハウスで面会した。
トランプ氏はウォルツ氏への支持を表明し、この問題が軍事作戦に影響を与えることはないと主張した。
(2)米国防総省の監察総監による調査
こうしたなか、上院軍事委員会の委員長を務めるロジャー・ウィッカー上院議員(共和)と、同委員会の民主党トップであるジャック・リード上院議員が、国防総省のスティーブン・ステビンズ監察総監代行宛てに書簡を提出した。
軍事作戦に関するチャットに米誌編集長が意図せず加えられた「事実と状況」を調査し、国防総省の機密情報保全方針を評価するよう求めた。
スティーブン・ステビンズ監察総監代行は4月3日、複数議員からの要請に応じて「この件に関する評価を開始する」と表明した。
調査について「国防長官や省職員が公務のために商用メッセージアプリを使用する際の省方針と手順をどの程度順守していたかを判断することが目的だ」と述べた。
通常であれば、このような書簡は即座に監察総監による調査開始につながる。
しかしトランプ大統領は1月にステビンズ氏の前任者であるロバート・ストーチ氏をはじめ、複数省庁の監察総監を解任しており、監察総監室の現状には疑問符が付く。
また、パム・ボンディ司法長官はこれまで、シグナルゲートに関して、単なる過失の調査は行わない意向を明らかにしている。
ボンディ氏は、トランプ大統領の弾劾裁判で弁護人を務めており、トランプ氏に最も忠実な側近の一人と見られている。
筆者は、トランプ氏はシグナルゲートの関係者を擁護しており、作戦に影響がなかったと発言しているので、調査はうやむやのまま終わるのではないかと見ている。
その結果、第2、第3のシグナルゲートが起きる可能性も否定できない。