不動産売買でも落とし穴 税務調査も
中山:年収2000万円層に限りませんが、海外に赴任するときに自宅マンションを売却したり、投資用マンションを出口戦略で売却したりする方もいます。不動産売却益は譲渡所得税として確定申告しなければなりませんが、ここにも落とし穴があります。
——どのような落とし穴でしょうか。
中山:固定資産税についての処理方法です。固定資産税は毎年1月1日の所有者に1年分の額の納税義務があります。ただ、年の途中、たとえば6月にマンションを売却したら、売主と買主の間で、おおむね半額ずつ年間の固定資産税を負担します。
——案分負担するのですね。それで何が起きるのでしょうか。
中山:買主は売主に対して、物件の代金に加えて、所有期間に応じた固定資産税分を支払います。ここで問題になるのが、売主が確定申告する際に、譲渡所得として物件の代金のみを申告してしまうことです。正しくは、買主から受け取った固定資産税分も上乗せした額、つまりは買主から受け取った全額を申告しなければいけません。
——固定資産税支払いに充てるのだから、申告不要と勘違いしてしまいそうです。
中山:実際には、売主が自治体から納税通知書を受け取り、固定資産税を支払います。買主は納税するのではなく、固定資産税分を売主に支払ったにすぎません。税理士でも固定資産税に詳しい人材はそうはおらず、このミスは結構あります。
——税理士を信頼しても、ミスしてしまうとは怖いです。固定資産税分が未申告の場合、どうなるのでしょうか。
中山:時価で数億円単位の物件の場合、固定資産税は数十万~数百万円に上る可能性があります。この水準の譲渡価格が未申告となると、税務調査が入るリスクがあります。
——なるほど。ただ、税務調査でターゲットにされるのは法人や芸能人、億近く稼いでいる経営層や個人事業主くらいといったイメージがあります。会社が所得税などを代わりに納税している給与所得者にも税務調査は入るのでしょうか。
>>後編に続く:税務調査のカモにされるサラリーマン!調査官に課せられた3つノルマとは…マッサージは医療費控除の対象にできる?