
所得税の確定申告が3月に終わったが、これから夏を迎え、税務調査のシーズンが始まる。給与所得者を中心に今年1800件の確定申告を代行し、2024年事務年度(2024年7月~2025年6月)には30件の税務調査に立ち会ったトランス税理士法人の中山慎吾代表税理士に、今シーズンの確定申告や税務調査での珍プレー・好プレーを聞いた。2回に分けてお届けする。後編はサラリーマン(給与所得者)が税務調査のターゲットにされる理由とは。(種市 房子:ライター)
>>前編:年収2000万円超のサラリーマンが税理士に駆け込む意外な理由…会社が所得控除の計算ミス、不動産売買にも落とし穴
国税調査官の3つのノルマ
——税務調査でターゲットにされるのは法人や芸能人、億近く稼いでいる経営層や個人事業主くらいといったイメージがあります。会社が所得税などを代わりに納税している給与所得者にも税務調査は入るのでしょうか。
中山慎吾氏(以下敬称略):例年、税務調査は国税庁の事業年度である7月~翌年6月のうち、前半の7~12月に集中して行われます。私は、2024年7~12月に30件の税務調査に立ち会いました。4件は当法人の顧客でしたが、26件は顧客ではない方からの「税務調査が入ることになったので立ち会ってほしい」という緊急の依頼がきっかけです。30件の中には、年収1000万円台の給与所得者の方もいました。
——給与所得者にとっても他人ごとではないのですね。

中山:国税当局の事情を知れば、その背景が分かります。国税調査官のノルマは野球に例えると3つあります。
1つ目は打席数で、税務調査の件数を表します。
2つ目はヒット数で申告漏れや無申告を見つけて追徴課税できた額。
3つ目はホームラン数で取引の隠ぺいや帳簿の虚偽記載など悪質性のある申告漏れや無申告を見つけて重加算税を課した額、を意味します。
税理士に頼まなかったり、知識が不十分な税理士に申告を依頼したりした給与所得者は、申告漏れをする可能性があります。税務署にとっては、税務調査の件数や追徴税額のノルマをこなすために、くみしやすい相手なのです。
——申告漏れをしないようにしつつ、税金を払いすぎないようにしないといけない。難しいですね。他に気を付けるべき点は。