ロシアの立場をひっくり返すという神話のような目的
「トランプ政権は、ある目標(それが何なのかはよくわからないが、ロシアの立場をひっくり返すという神話のような目的以外には不明)を達成するための、公にされていないスケジュールに基づいて動いており、他の問題へと移行したがっている。交渉に関わっている誰一人として、戦争――そこに伴う莫大な人的・戦略的リスク――を、ありふれた不動産取引とは異なるものとして捉えることができていないようだ」(ライアン氏)
ライアン氏は「トランプ氏の戦争への介入は全てが災難だった」と切り捨てる。ゼレンスキー氏を繰り返し侮辱する一方で、プーチン氏を元気づけてきた。「ウクライナには“ニンジンなしの棍棒だけ”、ロシアには“棍棒なしニンジンだけ”の外交姿勢をとってきた」と非難する。

ロシアによるプロパガンダやウクライナ領土に対する権利を主張するメッセージはトランプ政権の交渉担当者によって増幅され、長年にわたる米国の欧州同盟国は蚊帳の外に置かれた。トランプ政権はロシアとの経済的機会という幻影に目をくらまされているとライアン氏はいう。
1970年代初頭、米国のリチャード・ニクソン米大統領とヘンリー・キッシンジャー国家安全保障問題担当大統領補佐官は共産主義国家の中国が米国に敵対的だったにもかかわらず、毛沢東と国交を回復させた。中ソ分裂を巧みに利用し、地政学的三角関係を構築するのが狙いだった。