イーロン・マスク主導の政府支出削減は株価下落要因に

 つまりトランプ大統領が関税にこだわる理由は、海外に移転した工場を国内に引き戻し、ラストベルトの労働者に職を与えることだけではなく、多国籍企業の課税逃れを封じ、国家財政を好転させることにあるというのです。

 だとすれば、関税引き上げの結果として、企業の税引き後利益が減少し、株価に悪影響を与える可能性があることになります。

 実際、トランプ氏は1期目の2018年にも関税を課していますが、このときも企業の税引き後利益は減少し、S&P500株価は2割下落しました。

 その7年後のいま、米国の消費者が巨額の借金を抱えていることを考えると、企業は関税によるコスト増を製品価格に転嫁できるとは思えません。関税引き上げの影響を最も受けるはずの中国株以上に、米国株が下落しているのはこのためです。

 より根本的な話をすると、トランプ関税は株価が急落するきっかけであったに過ぎません。前のバイデン政権はコロナ禍の収束後も巨額の政府支出を続け、その流動性供給効果で株価は4年で6割増となりました。

 この間、政府債務は8.5兆ドル、率にして31%も増加したことで、歳出に占める利払い費は戦後初めて国防費を上回るまでになっているのです。

 こうした状況に対し、トランプ氏は政府効率化省(DOGE)を設立し、イーロン・マスク氏に行政の無駄をなくすよう指示しています。ところが政府支出の削減は、これまで株価を牽引してきた流動性の縮小に直結しました。歴史的高値圏にある株価が下落するのは時間の問題だったのです。

 では、株価はいったいどこまで下がるのでしょうか。