「フーバーにはなりたくない」というトランプ氏の株価対策

 問題はトランプ氏がその手段として関税引上げという政策を打ち出したことです。これでは景気後退や物価上昇が生じるのは必至だというので、4月2日の発表直後から世界中の株価が下落し、少し遅れて金利も上昇し始めました。

 これに対しトランプ氏は「ときどき薬を飲まなければならない」などとうそぶいていますが、特に動じる気配はありません。つまり長期的な利益のためには短期的な痛みは仕方ないというのです。

 大統領選のときから「大恐慌に向かっている」と言っていたほどなので、今回の金融波乱は想定通りの反応なのでしょう。

 しかし、一方でトランプ氏は「(大恐慌中の大統領だった)フーバーにはなりたくない」とも言っています。株価が暴落した場合の収拾策も考えているはずです。

 そのことは後で述べるとして、トランプ氏はなぜ劇薬ともいえる関税引き上げにこだわるのでしょうか。

 米金融サイト「Wolfstreet.com」は、トランプ氏の意図について次のように解説しています。

「米国の大手製薬会社は、法人税率が低いアイルランドで事業体を設立している。そして、その製品を米国で販売し米国の法人税を逃れている。米国で法人税を払わないことで、大手製薬会社の利益率は大きくなっている」

「関税の第1の目的は、生産を米国に移し“米国経済を犠牲にしたグローバリゼーション”のシステムを終わらせることだ。第2の目的は、企業が輸入する製品の利益に課税することだ。これにより大手製薬会社やハイテク企業は、アイルランドなどの金融センターに匿われた利益に対しても税金を払わなければならなくなる」