2.民主主義体制の脆弱性
米国には多くの優れた専門家や有識者がいるにもかかわらず、トランプ大統領の出現によってこれほど短期間に国家の土台が根底から揺るがされている事実を見ると、民主主義体制の脆弱性を痛感させられる。
民主主義は国民が支えるものであり、それを崩すのも国民である。
確かにトランプ大統領の責任は重いが、彼を大統領に選んだ米国民の責任も重い。
選挙結果を左右する平均的な米国民が、民主主義、世界秩序等米国が支えてきた価値を重んじる意識を低下させたことが現在の混乱を招いた要因の一つと考えられる。
振り返って、日本を見ると、3月の寄稿「トランプショックで日本の評価高まる、安定した政治・経済・社会に期待感」で紹介した通り、欧米諸国の有識者から日本の政治経済の安定が高く評価されている。
これもまた、政治家や経済人のみならず、平均的な日本国民の貢献による部分が大きい。
しかし、日本の国家の基礎も米国と同じ民主主義体制に依拠しているため、脆弱性は日米共通の特徴である。
その弱点を理解した上で、今後も日本が世界中から評価される国家の安定を保つには何が必要なのかを考える必要がある。
これまでこのような国家存立の土台に関わる根本問題を現実的な政策と結び付けて考える必要を感じる機会は多くなかった。
しかし、今やこの問題と真正面から向き合う必要を認識せざるを得なくなっている。