5.日本の安定を支える人材を育成するための仕組み
世界秩序形成への貢献のため、上記の多国間協議の「場」の運営を日本が担う。
その際には、イデオロギーや政治・経済・外交上の利害対立を超えて、世界中のすべての国を包含する形で運営する。
そうした中立的なお世話係の役割を担うのは、最近の一時期を除いて、なるべく敵を作らない全方位外交を目指してきた日本が適している。
日本国民のモラルは比較的高く、日本に対する国際的な信頼も厚いため、日本がこうした「場」のお世話係の役割を担えば、大半の国々が安心して参加できる。
特に現在は日本が最も安定していると評価されているため、その役割を担いやすい。
今後、日本が長期的に世界の中でこうした役割を担っていくには、日本が政治経済面で長期的に安定を保つ必要がある。
国家の安定を支えるのは平均的な国民の政治的な見識や経済的な競争力である。
それに加え、主要国が自国利益を優先した結果生じている現在の世界の混乱を見れば、モラルの高さも国家安定の重要な条件である。
具体的には次の3点の意識を国民各層が広く共有することがモラルの中身である。
第1に、万物の命とそれを育む地球を大切にする心を持つこと。
第2に、他者のために自己の最善を尽くしきる心を重視すること。
自国利益のためだけではなく、グローバル社会で起きていることを自分自身が取り組むべき課題であると受け止める当事者意識をもち、そのために必要な日本の役割を考えること。
第3に、自分自身の心を誠実に内省し、自身の人格形成のため真摯に努力を継続する強い意志(至誠の心)をもつこと。
そうした人格形成には次のような教育の仕組みが必要である。
第1に、小中高等学校において子供たちの個性を引き出し、それを磨いて伸び伸びと育む。
特定の学科に偏った学校の評価基準を修正し、スポーツ、料理、ダンス、アニメ、音楽など子供たちが備えている個性豊かな才能を自由に発揮させる教育の仕組みを構築する。
第2に、各分野における子供たちの能力に適合した教育の内容を提供するとともに、各自の学習意欲に応じて各人に適した学習速度で学べるようにする。
特に優れた才能を発揮する子供向けには高度な内容を学ぶことができる専門コースを用意する。
また、中学生や高校生が得意分野においては大学の講義も受講できる制度などを設計する。
第3に、小中学校の教員数を倍増させ、1学級の人数を20人程度に減らし、各人の個性に応じた教育を実施する。
不登校やひきこもりの子供たちへの対応、学級崩壊の防止等に対しても専門性の高い教員を配置して的確に対応できる体制を構築する。
以上のような教育の仕組みの導入により、子供たちの個性が引き出され、クラスの中で一人ひとりのユニークな才能を相互に評価するようになれば、相互尊重、相互信頼の関係性が育まれる。
これにより、子供たちが自分の得意分野で自信をつけ、周囲の人たちから応援され、それに対して感謝する繰り返しの中で得意分野を通じて周りの人たちに貢献する悦びを学べば、他者のために自己の最善を尽くす心が自然に育まれる。
日本の多くの国民がそうした人格を身に付け、日本が世界のために貢献する方向に向かうことを期待したい。