4.日本が担うべき世界秩序安定のための「場」の形成

 日本が上記の目標を掲げてその実現のために貢献しようとする場合、他国に対して強制することはできない。

 しかし、世界中の多くの国の人々が共通の大目標に向かって自発的に動き出すような雰囲気を醸成することは可能である。

 そのためには、以下のような「場」を形成する役割を日本が担うことが考えられる。

 その「場」において各国は自主的に設定した課題分野別目標を開示し、それとの対比で改善策の進捗状況についてわかりやすく分析・評価する。

 各国の達成状況が目標に達していなくても罰則は設けない。

 この「場」(プラットフォーム)は国家がルールに基づいて運営する部分と「民(non-state actors)」がモラルに基づいて自主的に運営する部分の融合によるハイブリッド型組織とすることが望ましい。

 ルールに基づいて国家間で合意した仕組みだけに依存すると、イデオロギー対立等によって国家間の合意形成が難しくなるケースが多発する。

 そうした事態による議論の停滞を回避するため、国家間の議論と並行して、「民」によるモラルに基づく討議の場をもつことが重要である。

 高いモラルを共有した「民」の有識者、専門家は、国家間の対立を乗り越えて、各自の専門分野における国際協力を促すことができる。