貿易戦争と「しっぺ返し」戦略をやさしく図解

【図1】

(図:筆者作成)

 この図は、国際貿易における「しっぺ返し」戦略の基本的な仕組みを表している。ゲーム理論の考え方を応用し、貿易戦争や関税政策の駆け引きを視覚化したものだ。ステップごとに解説しよう。

■ステップ1:最初の状態

 まず説明を簡素にするために、ある2つの国が、最初は関税を全くかけていない自由貿易の状態にあるとしよう。図の左側、青い円の「①関税をかけない」状態からゲームは始まる。ここから2つの可能性が生まれる。

■ステップ2:相手国の反応

 相手国の反応は次の2通りに分かれる:

▶︎シナリオA(上部の青い円)

 「②a 相手も関税かけない」= 相手国も協力的な姿勢を示し、関税を課さない選択をする。これが理想的なシナリオで、双方向の矢印は交互に関税をかけない選択を取ることを示しており、両国間の円滑な貿易関係がずっと続くことを表している。

▶︎シナリオB(下部の赤い円)

 「②b  相手が関税導入」=相手国が保護主義的な政策に転じ、自国製品に関税を課す選択をする。これが「裏切り」の状況で、貿易戦争の引き金となりうる。

■ステップ3:報復関税

 シナリオBの場合、次に進むのが右側の赤い円「③こちらも報復関税」だ。これは「しっぺ返し」戦略の核心部分で、相手国の関税導入に対して同様の措置で応じるという対応。相手の行動に応じて同じ行動を取るという、シンプルながら強力な戦略である。

■ステップ4:相手国の再考

 自国が発動した報復関税を受けて、「④相手が自由貿易に戻る」という選択をする場合がある。これは、相互の関税による損害を認識し、元の協力的な状態に戻ろうとする動きだ。

■ステップ5:循環と終着点

 図の下部にある大きな曲線矢印は、「④相手が自由貿易に戻る」から「①関税をかけない」に戻るプロセスを示している。これで一連のサイクルが完結し、再び協力状態に戻ることが可能になる。