吉本は「アンバサダー」松本のスキャンダルが痛手に

 処分が明けた24年2月以降、電通は「入場チケット販売促進等のための広報・プロモーション業務」(24年6月、約10億5000万円)など、個別の公募には関係企業とJVを組んで入札し、受託している。今年に入って在阪民放を中心にテレビで万博のCMや関連番組が頻繁に流れ、SNSでの情報発信が活発になったのはこのためだ。が、もはや遅きに失した感は否めない。

 当の電通関係者が語る。

「電通にとって今回の万博はもはや“消化試合”と化し、東京本社(東京オフィス)の視線はすでに2年後の横浜花博(2027年国際園芸博覧会)に向いています。

 というのも、そもそも今回の万博は国家行事にもかかわらず、招致段階から関係者が喧伝してきたように維新の会主導のイベント。これに対し、横浜花博は電通のクライアント政党である自民党のイベントです。電通としては、クライアントが主導する横浜花博の方が今回の万博よりはるかにコミットしやすいんです」

 では、電通の撤退後、機運醸成を担ってきた吉本興業はどうか。

 大﨑洋会長の退任など社内事情の変化に加え、万博アンバサダーだったダウンタウンの松本人志が週刊文春に性加害スキャンダルを報じられたことを機に、同社が万博に消極姿勢に転じたことは先の本に書いた。24年4月には「公募案件を含め万博協会が発注する事業は受託しない」と発表。すでに決まっていた自社パビリオン出展を除き、万博関連事業からの撤退を表明している。

 さらに今年3月には、浜田雅功も「体調不良」を理由に活動を休止。これを受けて、吉本と万博協会は同月末、ダウンタウンがアンバサダーから正式に降りることを発表した。

万博誘致委員会の発足式からアンバサダーを務めたダウンタウンだが、開幕直前に退任した=2017年3月(写真:共同通信社)

 とはいえ、同社のパビリオン「よしもと waraii myraii館」は無事完成し、所属タレントが在阪テレビ局の万博PR番組に出演するなど、機運醸成の一端を担ってはいる。だが、前出の万博協会関係者によると、このパビリオンの評判がすこぶる悪いのだという。

「私自身も3月の内覧会に参加したんですが、『海外客向けのノンバーバル(非言語)のエンターテインメント』といえば聞こえはいいものの、実際には売れない芸人のステージショーばかり。正直、この内容でよくBIE(博覧会国際事務局)が承認したなと思いました」