
「博覧会のプロ」電通が東京五輪事件で運営から撤退
万博協会関係者が続ける。
「協会では、個人販売が伸びない要因を『万博の中身が分からないから』などと分析していましたが、これらの調査結果を見るに、中身が明らかになるにつれ、逆に行きたくない人が増えている気がします。
不人気の要因は、海外パビリオンの建設遅れや安全面への不安など様々あるでしょうが、トータルで見れば、機運醸成に失敗したことに尽きる。最大の原因は、事前の宣伝も含め、博覧会運営のプロだった電通が準備段階で抜けてしまったことです」
広告業界のガリバーとして知られる電通は、いわゆる「博展(博覧会・展示会)業界」の雄としての顔も持つ。
電通は、アジア初の万国博覧会となった1970年の大阪万博に招致段階から関わり、同万博の成功によって、日本における「国際博のパイオニア」となった。その後、75年の沖縄海洋博、85年のつくば万博、2005年の愛知万博でも招致に関わり、開催が決まった段階で主催団体に社員を出向させ、機運醸成はもちろん、パビリオン建設からチケット販売まで、すべてを取り仕切ってきた。
今回の大阪・関西万博にも当然、電通は招致段階から関わっていた。だが、思わぬ事件を機に撤退を余儀なくされる。22年に発覚した東京五輪をめぐる一連の汚職事件である。
電通のOBや元幹部が収賄や談合に絡み、逮捕・起訴された(後に有罪)この事件で、万博協会は23年2月、電通をはじめ事件に関与した広告代理店各社を1年間、指名停止処分にした。これを受け、電通は協会から社員全員を引き上げ、運営から完全に退いたのである。
電通に依存してきた日本の博覧会の歴史、そして「電通不在」が今回の万博に及ぼした影響、さらには電通の撤退後、同社に代わって機運醸成を担ってきた吉本興業の失速などについては、『大阪・関西万博「失敗」の本質』に詳述した。