万博会場を視察に訪れた石破首相。後方は海外パビリオンのチェコ館=5日午前、大阪市此花区(写真:共同通信社)

「後半になれば盛り上がる」という期待にも暗雲が

 もっとも、関係者の評判が芳しくないのは吉本のパビリオンに限った話ではない。前出の電通関係者はこう語る。

「開幕1カ月前の3月中旬、久しぶりに会場を回りましたが、サイン(案内板)が少なく、会場内の建物の位置関係がわかりづらかった。また協会の管理施設などはリース資材を使用していることもあって配色は黒が多く、会場全体のカラーデザインがパッとしません。国際博らしい雰囲気がなく、どこかの地方博に来たんじゃないかと思うほどでした。

 やはり“博覧会のプロ”がいないのが原因でしょうね。企業パピリオンも、いま流行りの展示会ソリューション(展示会の成果を上げるための集客や運営についての提案)に基づいたウォークスルー型展示がほとんどで、正直、リピートしなくてもいいなと感じました。

 参加国のパビリオンには期待していますが、 タイプA(自前建設型)も、前回のドバイ万博と比べると規模が小さく、どうしても見劣りする。飲食施設も価格設定が高すぎ、観客目線が完全に置き去りです」

 こうした万博の中身がすでに多くの国民から見透かされていることが、前売り券の販売不振に現れているのだろう。危機感を募らせた維新代表の吉村知事は今年2月、万博協会トップの十倉雅和会長や事務方トップの石毛博行事務総長の頭越しに官邸を訪問。協会の名誉会長でもある石破茂首相に、協会がそれまで認めてこなかった当日券の販売を認めるよう泣きついたのだ。

 この件が決定打となったのか、吉村知事と石毛事務総長は今や「目も合わせず、口もきかない関係」(前出・協会関係者)なのだという。

 ここまで機運醸成に失敗した原因を見てきたが、過去の多くの万博では、後半になるにつれ、尻上がりに入場者が増える傾向があった。当日券導入も決まり、万博協会内には楽観視する向きも少なくないというが、前出の電通関係者は「今回ばかりはセオリーが通用しない」と断言する。

「夢洲という会場立地の問題があるからです。道路は橋とトンネルの2本、鉄道は1本に限られ、1日の入場者数には物理的な上限がある。後半に関心が高まったとしても、会場に入れない可能性がある。ということは、開幕直後から10万人単位の入場者をコンスタントに確保していかないと、1160億円の運営費がまかなえず、赤字で終わる可能性が高い。

 そもそも維新が夢洲を万博会場にしたのは、IRとの相乗効果を見込んでのことでしたが、そのことが逆に自らの首を絞める結果となったということです」

 このメガイベントの成否は、開幕からそう遠くない時期に見えてきそうだ。

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[1回目]万博は太閤秀吉に学ぶべきだった 難工事でパビリオン揃わず、メタンガスまで発生した夢洲の悪条件
[3回目]万博開催中に大地震が起きたら…橋とトンネルで15万人避難、致命的な場所が会場に選ばれた理由

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