同期ライバル最後の対決は着差2cmの激闘
この同期生同士の対決は前述の「チューリップ賞」から始まって5回行われ、結果はダイワスカーレットの3勝2敗となっています。
2頭のファンとしては両馬対決の際、どちらを応援していいのか迷ってしまい、結局2頭の単勝馬券を購入してしまった私のような方がいたかもしれませんね。
前述の「チューリップ賞」に続く2回目の対決は牝馬クラシックの「桜花賞」で、1着ダイワスカーレット、2着ウオッカの順で決着、3回目は同年「秋華賞」で1着ダイワスカーレット、3着ウオッカ、4回目は前述の有馬記念で2着ダイワスカーレット、ウオッカのほうは11着と惨敗。最後の対決は翌2008年秋の「天皇賞」で、ウオッカ1着のダイワスカーレット2着という結果で終わります。
この最後の対決となった「天皇賞」は歴史に残る名レースとして知られています。テレビ中継していたテレビカメラの角度の影響で、ゴールした瞬間、私はダイワスカーレットがハナ差で勝ったと思いましたが、長い写真判定の結果、ゴール直前で一瞬2cm分だけ前に出たウオッカの勝利となりました。
このレースはコースレコードとレースレコードを0.8秒更新するというきわめてレベルの高いレースでもあり、ウオッカに騎乗していた武豊とダイワスカーレットに騎乗していた安藤勝己の名手同士の対決でもありました。
野暮を承知で言わせていただくと、両馬最後の対決が同着で決まっていたのなら、両馬の伝説は神秘性がさらに深まり、競馬界もいっそう盛り上がったことでしょうに、この2cmの差を失くしてくれなかった「勝負の神様の野暮」をうらめしく思っているのは私だけでしょうか。
しかし、両馬の対決は引退後も続きます。2頭の繁殖成績をみると、2008年限りで引退したダイワスカーレットは翌年から繁殖生活に入り、2010年から24年までの間に牝馬を10頭、牡馬を1頭出産していますが、今のところ、大成した馬は出ていません。ダイワスカーレットの血統は、父・アグネスタキオン、母・スカーレットブーケという名血なので、この血を受け継ぐ活躍馬が出てほしいですね。
一方、ウオッカ(父・タニノギムレット、母・タニノシスター)は牝馬4頭、牡馬3頭の計7頭を出産、4勝馬を2頭出し、そのうち1頭が種牡馬になっています。
現在まで両馬による産駒の競争は今一つ盛り上がっていませんが、孫同士、あるいはひ孫同士の世代でクラシックを争う馬たちが出現するかもしれません。長い目で血統を楽しむ、これも競馬の魅力の一つです。
(編集協力:春燈社 小西眞由美)