マリア・モンテッソーリの考えに忠実に

 そんな彼女が出会うのがパリで名を馳せたクルチザンヌ(高級娼婦)のリリ。男性に対して、挑戦的なマリアとは違い、お金のために男性を意のままに操り、彼らのために着飾ることも厭わない女性。彼女は愛人関係にあったイタリア王子の招待を受け、ローマにやって来た。

© Geko Films – Tempesta - 2023

 隠していた障がいのある娘ティナをマリアに預けることになり、2人は出会う。最初はまるで気が合わない、対極に見えた2人がやがて力を合わせ、子どもたちの教育のために立ち上がっていく。

© Geko Films – Tempesta - 2023

 リリはこの映画のために考案されたキャラクター。一方でマリアに関してはできるだけ正確に描写するよう、配慮されている。「たとえスピーチをわかりやすくするために言い換えたとしても、彼女の考えに忠実な言葉を使っている。台詞は変えても、一言一句が彼女の考えに真に対応しているものにしたかった」と監督。

© Geko Films – Tempesta - 2023

 国際モンテッソーリ協会事務局長リン・ローレンスは「これは、マリア・モンテッソーリが、人間形成と教育についての見解と洞察を形成するのに役立った、画期的な年月を描いた特別な映画です。レア・トドロフの繊細な演出には真正性があります」と評価している。

© Geko Films – Tempesta - 2023

 レア・トドロフはドキュメンタリーを中心に活動し、本作が長編映画デビュー作に当たる。遺伝性疾患を持った娘が生まれたことが作品を手がけるきっかけとなった。娘のために特別な支援を必要とする子どもたちの教育を経験し、その多くがマリア・モンテッソーリの実践していたことに非常に近いと感じたそうである。