すべての道は皇位に通じている
天皇陛下は、高校生の頃より歴代天皇の事績について、2週間に1度のペースで、日本の権威とされる学者たちから学んでいたという。歴史を学ぶことも帝王学の基本だ。
令和4(2022)年の天皇陛下62歳の誕生日の記者会見で、約700年前に花園天皇が若き皇太子に書き残した、『誡太子書(かいたいしのしょ)』を例に挙げてこう話された。
「誡太子書においては、(花園天皇は)まず徳を積むことの大切さを説かれ、そのためには道義や礼儀も含めた意味での学問をしなければならないと説いておられます。このような歴代の天皇の思いに、深く心を動かされました」
天皇が国民統合の象徴であるからには、礼節を尊び一点の曇りなき真摯な心を持つよう修養しなければならないことを、天皇陛下はわが意を得たりと感じ入ったというのだ。
悠仁さまに、この境地を求めるのはまだ早いと思うが、あの微かな憂いをたたえつつ、懸命に、そして丁寧に話された姿からは、とても純粋で真面目な一面が色濃く漂ってきた。
論語を著した孔子は、「徳は孤ならず、必ず隣あり」という言葉を残している。誠実で真面目な人物、つまり徳のある人は孤立しない。必ず共感し助けてくれる者が現れてくるという意味だ。
今後、悠仁さまが歩む「皇位継承の日々」には、悩んだり迷ったり、あるいは世の中の視線や言葉に翻弄される局面も出てくるだろう。しかし、その道を正しく歩めば、きっと周囲に悠仁さまを支えてくれる人々が現れ、皇位継承の日まで導くはずだ。
そのことを意識して身近な人々を見回せば、皇室の方々はもちろん、友人、恩師、秋篠宮家の関係者など、悠仁さまにとって学びを得るさまざまな人々のなんと多いことか。
人を知り、社会を知り、道を知る。そしてすべての道は皇位に通じているのだ。

【つげ・のり子】
放送作家、ノンフィクション作家。東京女子大学卒。ワイドショーから政治経済番組、ラジオ番組まで様々な番組の構成を担当する。2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在もテレビ東京・BSテレ東「皇室の窓」で構成を担当。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)などがある。日本放送作家協会、日本脚本家連盟会員、日本メディア学会会員。西武文理大学非常勤講師も務める。