現代の象徴天皇にふさわしい「国民ファースト」の精神
今年3月3日に行われた記者会見では、象徴天皇の存在、皇室の在り方はどうあるべきかを問われ、こう話された。
「これまで、天皇皇后両陛下や上皇上皇后両陛下が、公的なお務めにお心を込めて取り組まれているお姿を拝見し、また、お話を伺う機会もあり、大切なことを学ばせていただいてまいりました。(中略)象徴天皇の存在につきましては、上皇陛下がお考えになってこられ、天皇陛下が先日の記者会見でおっしゃっていましたように、常に国民を思い、国民に寄り添う姿なのではないかと思います」

このお答えの中で重要なのが、天皇皇后両陛下と上皇上皇后両陛下から、直接・間接を問わず、「大切な学び」があったという点だ。
「大切な学び」とは何かといえば、それは取りも直さず天皇としての在るべき姿であり、天皇たる心構えなのだろうと拝察する。
言い換えれば、天皇陛下も上皇陛下も生まれながらにして、皇位を継ぐ者として誕生しているがゆえに、幼少時からそのための教育が施されてきたからこそ、悠仁さまの年齢の時に、まずは何を学ぶべきかを折に触れ、話されたではないだろうか。特に上皇陛下は、戦後の新憲法下での象徴天皇とは何かを模索されてきた最初の天皇でもある。
その模索の中で帰結した象徴天皇とは、「国民と苦楽を共にする」姿だ。
天皇陛下もまた、「私は、日本国及び日本国民統合の象徴として、上皇陛下のお気持ちをしっかりと受け継ぎ、常に国民を思い、国民に寄り添いながら、象徴としての責務を果たすべくなお一層努めてまいりたいと思っております」と、上皇陛下の考えを踏襲しつつ、国民との一体化とも言える強いつながりを述べられている。
こうした国民に常に寄り添う、いわば国民ファーストの精神こそが、現代の象徴天皇にふさわしい帝王学の基礎と言ってもいいだろう。
そのことを悠仁さまは、十分に骨身に染みるほど理解されているのかと言えば、まだ理屈としてのみ分かっているという段階ではないだろうか。
なぜならば、皇位継承権第二位の親王とはいえ、悠仁さまは今年春から大学生になる若者なのだから、実際に公務に携わらなければ、さまざまな国民のありように触れることはできないからだ。
世の中には、困難に遭遇し悲嘆にくれる人々や、また理不尽な運命に翻弄される人々もいる。そうした苦しみや悲しみの渦中にいる人々にこそ、皇室の方々は深く寄り添わなければならないと考える。
天皇陛下や上皇陛下から受け継がれた「大切な学び」が、実感を伴って悠仁さまが思い描く、天皇の理想形の柱となるのはまだ先のことなのかもしれない。しかし、その息吹は先の記者会見でおおいに感じられた。
「皇室の在り方につきましても、天皇陛下のお考えのもと、人々の暮らしや社会の状況に目を向け続けていくことが重要であると思います。そして、出会いを大切にして、人々の幸せを願い、気持ちに寄り添い続けることが重要であると思います」
頼もしい言葉であった。