ロシアがリクルート活動に諜報員を動員?
米国では、まさにこうした元連邦職員たちの不満につけ入ろうとしているのは中国のみならず、ロシアも同様ではないかという危機感が生じている。その上、ロシアなどが取り込もうとしているのは科学や研究分野のみならず、国家安全保障に従事する関係者である危険もあるという。
米CNNは3月初め、ロシアや中国などが安全保障に関係していた元職員や今後解雇されそうな人材を、自国の諜報部員を動員してリクルートするよう指示していると伝えた。米国の諜報筋による情報であるという。
同局はまた、米国外の情報機関が、LinkedInなどのSNSを通じて求職中の元連邦職員などを積極的に獲得するよう指示していると報じている。トランプ政権による大量解雇を最大限活用しようという意図であるという。
連邦職員の削減は、国防総省や中央情報局(CIA)にまで及んでいる。複数のメディアが、国防総省での人員削減は5000人以上に上るとしている。ワシントン・ポスト紙は今月6日の時点で、CIAではすでに80人ほどが職を失っていると伝えた。
CNNの情報筋は「組織に関する豊富な知識を持ち、見捨てられた連邦政府職員が、我々の競争相手や敵対国の諜報機関にとって、驚くほど魅力的なターゲットであることは想像力を働かせなくても分かる」と警告している。
米国はそもそも、欧州の君主制や宗教的な迫害などを逃れた移民らにより形作られたものだ。今度はその米国で皇帝然と振る舞うトランプ氏やマスク氏らによるいじめ政治に「迫害」された人たちは、それぞれの専門性と共にどこへ向かうのか。
楠 佳那子(くすのき・かなこ)
フリー・テレビディレクター。東京出身、旧西ベルリン育ち。いまだに東西国境検問所「チェックポイント・チャーリー」での車両検査の記憶が残る。国際基督教大学在学中より米CNN東京支局でのインターンを経て、テレビ制作の現場に携わる。国際映像通信社・英WTN、米ABCニュース東京支局員、英国放送協会・BBC東京支局プロデューサーなどを経て、英シェフィールド大学・大学院新聞ジャーナリズム学科修了後の2006年からテレビ東京・ロンドン支局ディレクター兼レポーターとして、主に「ワールドビジネスサテライト」の企画を欧州地域などで担当。2013年からフリーに。