おわりに
日米両国は、弾道ミサイル防衛(BMD)に関して緊密な連携を図ってきており、米国保有のミサイル防衛システムの一部が、我が国に配備されている。
具体的には2006年、米軍車力通信所(青森県)に「TPY-2レーダー」(いわゆる「Xバンド・レーダー」)が、同年10月には沖縄県にPAC-3が、2007年10月には青森県に統合戦術地上ステーションが配備された。
加えて、2014年12月には、米軍経ヶ岬通信所(京都府)に2基目のTPY-2レーダーが配備された。
2018年10月には、第38防空砲兵旅団司令部が相模原(神奈川県)に配置された。
また、2015年10月、2016年3月と2018年5月には、米軍BMD能力搭載イージス艦が横須賀海軍施設(神奈川県)に配備されている。
(出典:令和6年防衛白書)
また、1999年度から海上配備型上層システムの日米共同技術研究に着手し、2006年度からBMD用能力向上型迎撃ミサイルの日米共同開発を開始し、「SM-3ブロックIIA」として配備に至っている。
そして今回、可能な限り遠方にてHGVに対処することで迎撃機会を確保し確実な迎撃に寄与するアセットとして滑空段階迎撃用誘導弾(GPI)の開発に日米共同で取り組むことになった。
日米共同開発の一般的な技術的利点は次の通りである。
①開発コストやリスクを分担して、優れた技術を開発できる。
②国際的に活躍するエンジニアを育成できる。
③防衛生産・技術基盤を維持・強化できる。
特に、今回の滑空段階迎撃用誘導弾(GPI)の日米共同開発の利点はつぎのとおりである。
①誘導弾としてSM-3ブロックⅡA以来の日米共同開発であり、日米同盟のさらなる進化が期待できる。
②既存のイージスシステムを含むBMD体制を最大限活用する形で、HGV対処能力を早期に構築できる。
最後に、ドナルド・トランプ米大統領は3月6日、「日本は米国を守らない」と日米安全保障条約に不満を述べた。
日本は、トランプ大統領の言動に翻弄されることなく、ポスト・トランプを見据えて、日米同盟の維持・強化に努めるべきであろう。