2、日本の衛星コンステレーションの構築
本項は、令和5年版防衛白書「4宇宙領域での対応」および防衛省の「令和7年度宇宙関連概算要求」を参考にしている。
近年、米国などを中心に、多数の小型人工衛星が一体となって様々な機能を担う、いわゆる衛星コンステレーション計画が進められている。
宇宙空間からの情報収集能力の強化や、人工衛星に被害が生じた際の機能維持への寄与が期待されている。
防衛省は、各国が開発・配備を進めるHGVを早期に探知・追尾する手段として、衛星コンステレーションを用いた宇宙からの赤外線観測が有効である可能性があると考えており、衛星搭載用の赤外線センサーに関する宇宙実証を行っている。
このほか、高感度広帯域の赤外線検知素子などの将来のセンサーの研究を推進することとしている。
防衛省の2025年度予算において、最も力が入れられている項目の一つが、2832億円が盛り込まれた衛星コンステレーションの構築である。
この衛星コンステレーションは、一定の軌道上に多数の小型人工衛星を配置する。
こうすることで、観測エリアの上空にいつでも1つ以上の衛星がある状況を作り出し、それぞれに搭載されたセンサーを用いて他国の艦艇やミサイル発射装置などの動向を常に逐一把握しようというものである。
2025年度から段階的に打ち上げ、2027年度の本格運用を目指す。
衛星コンステレーションを活用したHGVの探知・追尾システムのイメージ図は下図2の通りである。
図2:衛星コンステレーションを活用したHGV探知・追尾システム

(1)事業の概要
スタンド・オフ防衛能力(長射程ミサイルにより敵を遠距離から無力化する能力)に必要な目標の探知・追尾能力の獲得のため、令和7年度末から衛星コンステレーションの構築をPFI方式(BOO方式)(注1)により開始する。
すなわち、民間に衛星を所有させ、それを利用することで事業費を抑制しつつ、防衛省優先の衛星コンステレーションとして、構築・活用することで、長期安定的なサービスの確保を実現する。
(注1)PFI (Private Finance Initiative)と方式とは、公共施設等の維持管理や運用等を民間資金、経営能力および技術力を活用して行う契約手法のこと。BOO(Build Operate and Own)方式とは、民間事業者が公共施設を建設・維持・管理・運営し、事業終了時に解体・撤去する事業方式のこと。
(2)事業スキームの概要
ア.衛星の構成
衛星の性能等を踏まえ、SAR(合成開口レーダー、Synthetic Aperture Radar)衛星を中心に光学衛星を組み合わせた構成とする。
(筆者注;当初はSARレーダーを搭載するが、将来は現在研究中である高感度で広帯域な赤外線センサーが搭載されるであろう)
イ.事業方式・所有権
PFI方式(BOO方式)で、衛星・地上施設は民間事業者に保有させ、民間事業者のノウハウ等を活用し、運用・維持管理を行う。
ウ.事業期間
衛星の寿命も考慮し、2025年度から2030年度までの6年間とする(準備期間1年+小型衛星の寿命5年)。