スイスの税関統計によると1月には200トン近い金がスイスから米国に輸出された。米ブルームバーグ通信は、米JPモルガン・チェースがCMEでの現物受け渡しに備えて2月に40億ドル余りの金地金を米国へ輸送すると伝えた。CMEの金認証在庫は1000トン以上となり、コロナ禍以来の水準まで積み上がった。
実際、CMEの2月物の決済では200トンを超す現物が受け渡された。JBMAの池水氏は「わざわざ高い価格でこれだけの現物を引き取る市場参加者がいることも謎だ」という。トランプ関税の影が米国の商品先物取引を混乱させた可能性がある。
米国の銅先物はロンドン市場より1トンあたり1000ドルも割高
トランプ大統領は2月下旬、3月4日にカナダとメキシコからの輸入に25%の関税をかけ、中国には追加関税を10%上乗せするとSNSに投稿した。3月12日にはすべての国からの鉄鋼とアルミ製品輸入に25%の追加関税を課すとした。
3月4日にはSNS投稿通り関税を発動したわけだが、それに先立って商品相場は動いていた。CMEは鉄鋼製品であるホットコイル(U.S. Midwest Domestic Hot-Rolled Coil Steel)指数先物も扱う。2月24日の清算値を見ると2月物が1トン799ドルであるのに対し、3月物は901ドル、4月物は945ドルと追加関税を想定して高くなっていた。
CMEの銅先物はLME相場より1トンあたり1000ドル前後も割高な水準で推移し、銅在庫も急増した。
米国はカナダからのアルミ輸入が多いが、3月12日以降、トランプ氏の予告通りになれば計50%の関税が加わることになる。マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA、東京・新宿)の分析では、アルミは銅と異なり、CME先物の反応はそれほどではなく、現物市場のプレミアム(割増金)が上がっている。カナダからの輸入関税が50%まで上がると、米国向けのアルミプレミアムは直近の1トン800ドル弱から1000ドル超になる可能性が高いという。
トランプ政権はさらに銅の輸入関税引き上げも検討している。