米自動車産業に「多大な影響」とフォードCEO

 米国内にも銅鉱山は存在するが、MRAの新村直弘共同代表は「コストの高い米国でさまざまな金属鉱石、素材を生産しようとする企業が出てくるかどうかは疑問だ」という。

 鉄鋼やアルミ、銅製品といった素材価格の上昇は、自動車をはじめとする米国製造業の原材料コストを押し上げる。米企業が原材料コスト高を製品価格に転嫁すれば、しわ寄せは消費に向かい、十分な転嫁ができなければ収益を圧迫することになる。

 米自動車大手フォード・モーターのジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)は、トランプ政権がメキシコやカナダからの輸入に高い関税をかけ、それが長期化した場合には米国の自動車産業に「多大な影響を与える(blow a hole)」と語った。

 トランプ政権が中国からの輸入関税をさらに引き上げたことで、中国経済にはマイナスの圧力が増す。高い関税は中国からの輸入品価格の上昇を通じて米国のインフレ圧力を高めるだけでなく、中国経済の停滞がブーメランのように米景気への悪影響として戻ってくる。

 なお今回、トランプ政権は米国への影響を軽減するため、原油などカナダからのエネルギーの輸入関税は10%にとどめた。それには理由がある。

 シェールオイルの生産を急増させた米国は2015年に原油の輸出を解禁。米エネルギー情報局(EIA)の統計で直近、日量400万バレル(1バレル=約159リットル)の原油を輸出する。同時に、輸出量よりも多い600万バレル前後の原油を輸入している。その多くがカナダからの輸入だ。

 国内生産が増えたのだから、それを国内に回せば輸入を減らせるのでは?と思う読者もいるだろう。

 それができない背景には、産出する油種の違いと精製設備の問題がある。