もし陥没が豪雨シーズンに起きていたら…

橋本:例えば、東京都は2025年に57.8km、大阪府は15.1km、愛知県は53.1kmの点検計画を立てています。

 点検計画の長さが短く、腐食リスクが大きい都道府県が最もリスクが高いといえますが、東京都も大阪府も愛知県も、全ての下水道管に対応できないことは明らかです。

 下水道管の老朽化を解決できる最も効果的な方法は「下水道管の更新」、つまり取り替えです。ところが、すでに標準耐用年数を超えた下水道管が数多くあるのに、更新投資はまだ始まっておらず、その議論すらされていません。

(図:共同通信社)
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 今回の道路陥没とそれに伴う救助作業で、埼玉県の12の市町で下水道の使用が制限されています。下水道が止まるということは「①町を浸水から守る機能、②水環境を守る機能、③衛生的な暮らしを守る機能」という3つの機能が失われていることを意味します。

 八潮市は標高0.6メートルの町で、ここの下水道管が破断すると、浸水のリスクは当然高まります。もしこれが豪雨シーズンであれば、二次災害が起きていた可能性も高いのです。

 環境面に関しては、もうすでに春日部では未処理の下水に塩素が付け加えられ、放流されています。未処理ということは、どんな汚染物質が川に流れているか、わからないという意味です。

 最後の点についても、現在、お風呂や洗濯を控えてくださいというお願いが市民に対して出されています。まして、現在はインフルエンザなどの感染症も流行っています。下水道が使えなくなると、普通の生活における衛生環境も悪化するのです。

 下水道を普段、私たちは当たり前のように利用していますが、これが使えなくなると、日常生活を送ることさえままなりません。下水道管の更新投資の議論を、今こそ進めなければなりません。
 
──ただ、前編で指摘されたように、下水道事業はヒトもカネも不足しているという現実があります。