被差別部落の問題を伝えること自体は「悪」ではない
──昨今では、部落問題を知らない若年層も増えていると思います。そういった人たちに知ってもらう必要はあるのでしょうか。
角岡:「わざわざ部落のことを教える必要はない」という意見は根強く存在しています。部落を知らない人に教えるから差別問題を掘り起こしてしまうのではないか、部落を知る人がいなくなればこの問題も自然に消えるのではないかという考え方です。
ただ、たとえ学校で教えなくとも、どこが部落で誰が部落民かを気にする人がいる限り、部落差別はなくなりません。
部落の問題を伝えること自体は「悪」ではありません。その知識をどのように利用するのかが、非常に大切だと思うのです。
仮に差別がなかったとしても、歴史的にそのような差別が存在していたということは、知っておいたほうが絶対にいいでしょう。
パレスチナの問題やユダヤ人の問題、ロシアとウクライナの戦争を知らないほうがいいと思いますか? 知らなくてもいい問題なんて、この世に存在するのでしょうか。部落問題も同じだと思います。
角岡伸彦(かどおか・のぶひこ)
フリーライター
1963年 兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。神戸新聞記者などを経てフリーに。著書に『被差別部落の青春』(講談社文庫)『ふしぎな部落問題』(ちくま新書)、『はじめての部落問題』(文春新書)などがある。『カニは横に歩く――自立障害者のたちの半世紀』(講談社)で第33回 講談社ノンフィクション賞受賞。
関 瑶子(せき・ようこ)
早稲田大学大学院創造理工学研究科修士課程修了。素材メーカーの研究開発部門・営業企画部門、市場調査会社、外資系コンサルティング会社を経て独立。YouTubeチャンネル「著者が語る」の運営に参画中。