少佐とミーシャの緊迫感あふれる攻防戦
私が『エロイカ』にハマりだしたのはまさにこの「新冷戦」の時代だった。新冷戦下での東西間の対立を背景に、少佐やミーシャといったエージェントが、それぞれの国や陣営のための情報戦にしのぎを削るスパイ・アクションにハラハラドキドキした。そこに、伯爵やらドケチ虫やら部長やらロレンスやらが勝手に絡んで巻き起こるコメディテイストの物語に引き込まれた。
物語のディテールとして織り込まれた国際情勢や地域情勢について知識を得るのも楽しかった。例えば、第6話「イン・シャー・アッラー」では、トルコがNATO(北大西洋条約機構)の一員だということを学んだ。当地の習慣「お茶でくつろぐ」にすっかり染まった現地職員を一蹴するクールな少佐は限りなく格好いい。

第9話「アラスカ最前線」では、NATO、KGB(ソ連国家保安委員会)、CIA(アメリカ中央情報局)の間で駆け引きが展開される。ミグ戦闘機を奪った少佐がソ連領からベーリング海を越えてアラスカに帰還したときの米ソ両国の対応(見て見ぬふりをして国際問題にするのを避ける)には、「ああこれが国家間のもめ事の“オトナ”の処理の仕方なのかな」と考えたりもした。

なお、高校時代にアラスカのアンカレッジ空港を訪れ、クマの剝製を見つけた時は嬉しかった。「クマのフン」にはなりたくないなと思ったものだ。