©よしながふみ/白泉社©よしながふみ/白泉社

NHKで2023年10月3日からドラマ10「大奥 Season2」が放送されている。よしながふみによる原作は2021年に完結しており、Season2では「医療篇」「幕末編」として物語のラストまでを実写化する。太陽の地図帖『よしながふみ『大奥』を旅する』(太陽の地図帖編集部編、平凡社)からの引用を交え、コミック版『大奥』の作品世界を紹介する。

◎本稿は、平凡社のWebサイト「Web太陽」に掲載された記事を転載したものです。

 和宮親子(ちかこ)内親王は、孝明天皇の異母妹で、明治天皇の叔母。幕末の、幕府と朝廷の公武一和を目指す融和政策により、14代将軍・家茂の正室として江戸に降嫁した。

『大奥』では、13代将軍・家定と14代将軍・家茂は女将軍である。和宮は孝明天皇の弟なのだが、実際に大奥にやってきたのは、男装した替え玉の姉という設定になっている。和宮の姉は、生まれた時から片手がなく、日陰の身として育てられ、江戸行きを厭う弟の身代わりとなったのだ。

よしながふみ『大奥』17巻P138より ©よしながふみ/白泉社よしながふみ『大奥』17巻P138より ©よしながふみ/白泉社

和宮は3代将軍・家光の再来

 作者のよしながふみは、和宮についてこのように語っている。

――胤篤が最後の有功で、和宮が家光の再来なんですね、二人は恋愛関係にはなりませんが。和宮も、家光と同じく日陰の身で育ち、ひねています。今度は、出会ったのは女の子だったんだけど、自分を受け入れてくれて。和宮が面白いのは、家光と違って男装していることに大したストレスがないんです。のちに女性の着物も着るようになりますが、「私はいつだって私です」なんです。どちらもできる、選択可能という自由さは、幕末になり、ちょっと違う風が吹いてきた、というところで。新しい時代が来ているんですね。
(P70「天璋院と和宮」よしながふみが語る創作秘話より)