2024年のNHK大河ドラマは「光る君へ」。主人公紫式部は、現代にまで読み継がれるベストセラー『源氏物語』を書き上げた。難解とされる源氏物語を漫画化したのが大和和紀『あさきゆめみし』だ。太陽の地図帖『大和和紀『あさきゆめみし』と源氏物語の世界』(太陽の地図帖編集部編、平凡社)からの引用を交え、源氏物語の世界を紹介する。
◎本稿は、平凡社のWebサイト「Web太陽」に掲載された記事を転載したものです。
『源氏物語』は、世界最古の長編小説とされる、“日本古典文学の最高峰”。
天皇の息子(皇子)として生まれた主人公(光源氏)が、さまざまな女君と恋をし、挫折を経験しながらも、成功を手にする物語は波瀾万丈で、千年以上を経た今でも魅力を放つ。
しかしながら、『源氏物語』は難解だ。全54帖もの長大な物語のうえ、主語がわかりづらく、また曖昧な部分が多く、読みこなすのは至難の業……。そう感じているのは、何も現代を生きる私たちだけではない。
というのも、『源氏物語』は成立直後から絵画化が始まったと考えられており、その後も膨大な数の絵画が作られ続けていく。作者・紫式部と同じ時代を生きた人たちも、その後の時代――鎌倉時代も室町時代も江戸時代も――の人たちも、絵の力を借りながら、『源氏物語』を楽しんでいたことがわかる。
「源氏絵」の系譜である『あさきゆめみし』
絵画化された『源氏物語』は、「源氏絵」と呼ばれ、やまと絵において一ジャンルを築いている。『源氏物語』を漫画化した『あさきゆめみし』は、そうした「源氏絵」の系譜ととらえることができるだろう。
作者の大和和紀は下記のように語っている。
「私にとっては、とても面白い物語なんです、『源氏物語』って。「起伏に富んだ大河ドラマ」のように思っています。女の子がみんなワクワクして読める、華麗な宮廷物語ですよね。(略)でも読んでいる人はいない。(略)確かに原文はもとより、現代語に訳されたものでさえ、ちょっと難しい。もっとみんなに読んでもらいたい、漫画という表現によって読みやすく伝えられればと思いました」(P15~16「大和和紀ロングインタビュー・第一部」より)
大和和紀は、漫画化にあたり、たくさんの「源氏絵」に目を通し、参考にしたという。なかでも、その影響を強く感じられるのが、「現存最古の源氏絵」である国宝『源氏物語絵巻』だ。