©よしながふみ/白泉社©よしながふみ/白泉社

NHKで2023年10月3日からドラマ10「大奥 Season2」が放送されている。よしながふみによる原作は2021年に完結しており、Season2では「医療篇」「幕末編」として物語のラストまでを実写化する。太陽の地図帖『よしながふみ『大奥』を旅する』(太陽の地図帖編集部編、平凡社)からの引用を交え、コミック版『大奥』の作品世界を紹介する。

◎本稿は、平凡社のWebサイト「Web太陽」に掲載された記事を転載したものです。

 瀧山は旗本の娘とされる。14歳で大奥に入り、13代将軍・家定、14代将軍・家茂の「将軍付き御年寄」として活躍した。なお、ドラマなどでよく使用される「大奥総取締」という役職は架空のもので、正式には「御年寄」と呼ばれた。

 幕末の大奥では1000人もの女中が働いていた。瀧山は、その実務上のトップとして君臨した。その瀧山の権勢は、瀧山が残した日記からうかがうことができる。

 その日記『大奥御年寄瀧山日記』が書かれたのは幕末の10年間(1859~68年)。「実成院(家茂の実母)」「天璋院(家定の御台所)」「和宮(家茂の御台所)」といった名前が頻繁に登場し、彼女たちとのやりとりが記されている。また、「戴物控」(いただきものひかえ)には、大名をはじめとする幕府の要人から献上された品々が細かく記載されており、「奥」だけでなく、「表向き」にも影響力を持っていたことが見てとれる。

よしながふみ『大奥』第18巻P138より ©よしながふみ/白泉社よしながふみ『大奥』第18巻P138より ©よしながふみ/白泉社

 瀧山の生きた時代は幕末の激動期。家茂が死ぬと、慶喜が15代将軍に就任するも、京都で政務を執り、江戸城は城主不在となった。さらに、本来ならば大奥の主となるべき慶喜の御台所・省子(のちに美賀子に改名)は、慶喜の不在を理由に江戸城に入らなかった。将軍も御台所もいない大奥の運営を瀧山は一手に担ったとされる。

 慶応3(1867)年、慶喜は大政奉還を奏上し、朝廷に政権を返す。そして、その翌年、江戸城無血開城により、大奥は最後の日を迎える。