NHKで2023年10月3日からドラマ10「大奥 Season2」が放送されている。よしながふみによる原作は2021年に完結しており、Season2では「医療篇」「幕末編」として物語のラストまでを実写化する。太陽の地図帖『よしながふみ『大奥』を旅する』(太陽の地図帖編集部編、平凡社)からの引用を交え、コミック版『大奥』の作品世界を紹介する。
◎本稿は、平凡社のWebサイト「Web太陽」に掲載された記事を転載したものです。
第十五代将軍・徳川慶喜は、朝廷に政権を返上し(大政奉還)、江戸開城を行なった最後の将軍である。『大奥』では史実と同様、男性として描かれ、江戸幕府の幕引きに重要な役割を果たしている。
しかし、『大奥』で描かれる慶喜は、「名君」とは言い難い。
十三代将軍・家定には「慶喜には心が無いのだ 国の民や家臣を思う心が無い者はどんなに聡くても将軍にはふさわしい器の者ではない!」と言われるほどである。
では、史実の慶喜は、どのような人だったのだろうか。