おわりに

 日本は、かつて失敗した潜水艦受注の教訓を生かさなければならない。

 豪州の潜水艦受注競争では、日本の川崎重工と三菱重工が手掛ける「そうりゅう型」が圧倒的に有利と言われていたが、フタを開けてみたらフランスの造船大手DCNSが推す「バラクーダ」型を共同開発するという決定となっていた。

 東洋経済オンライン「潜水艦受注失敗から学ぶ新幹線輸出への教訓」(2016年5月13日)は以下のように解説している。

「防衛装備関連の業界や政界には静かなショックが走ることとなった。原因としては、様々な指摘がある」

「この間に、親日米のトニー・アボット政権から、親中のマルコム・ターンブル政権へと相手が替わったためであるとか、そのターンブル政権に対しては『日本の潜水艦を採用しないよう』中国の意向が来ていたという説もある」

「また、日本側としては解禁間もない『武器輸出』に当たることから、日本国内の世論を刺激しないように『民間業者が積極的に売り込みに動けなかった』という事情も囁かれている」

「その他にも、『反捕鯨』を掲げているターンブル政権を刺激するかのように調査捕鯨をスタートしたのが軽率だったという声もある」

 そのほか、海上自衛隊の一部が防衛機密の保護を理由に難色を示し、完成艦の輸出にこだわったことや、三菱重工が積極的であったのに対し、川崎重工はやや及び腰であったなど両社の足並みがそろわなかったということも指摘されている。

 ところで、2022年4月12日、経団連は、海外移転の推進のため、政府主導のもと、防衛省はじめ関係省庁が横断的に連携する体制を強化したうえで、以下の施策を講じることが重要であると提言した。

(1)海外移転の方針の策定

 防衛計画の大綱では、政府の外交・安全保障政策に則って、防衛装備・技術の海外移転を実施する方針を策定する旨を明記すべきである。

(2)官民連携による海外移転の推進

 海外移転においては、防衛装備品以外の取引条件(オフセット取引)(注1)や装備品の国内の調達体制や企業の契約範囲を超える内容を含むことから、相手国政府には、日本国政府が対応して交渉することが基本である。

 例えば、政府首脳へのトップセールスなど外交ルートの活用など。

注1:オフセット取引とはいわゆるバーター取引のことで、例えば武器を売る代わりに相手国の農産物を買うといった方式である。これは世界の多くの国々では慣例となっているが、日本など一部の国では取り入れていない方式である。

(3)海外移転を推進する措置

 我が国の防衛関連企業が装備品を海外移転する際には、長年の実績を有する海外の政府・防衛関連企業と競合することは避けられない。

 したがって、海外移転を意識した国内開発の実施や、官民の協力体制や支援体制を構築する必要がある。

 最後に、日本は今回は初の護衛艦輸出を目指して「官民合同推進委員会」を設置した。

 筆者は、中谷元・防衛相が言う「オールジャパン」体制で、豪州海軍が導入を計画する次期フリゲート艦の共同開発相手として指名を獲得することを強く願っている。