1.防衛装備品の海外移転に関連する主要事象
以下は、各種報道を取り纏めたものである。時系列に沿って述べる。
①2014年4月1日、安倍晋三内閣は閣議において、従来の「武器輸出三原則等」に代わる防衛装備の海外移転に関する新原則として「防衛装備移転三原則」を制定した。
また同日、国家安全保障会議において「防衛装備移転三原則の運用指針」を制定した。
②2022年3月8日、岸田文雄内閣は、国家安全保障会議において防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、ウクライナへの防弾チョッキやヘルメットなどの提供を正式に決めた。
③2022年4月12日、経団連は、海外移転の推進のため施策を提言した。
④2022年12月9日、日・英・伊3か国首脳は、次期戦闘機共同開発協力に関し、「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP:Global Combat Air Programme)に関する共同首脳声明」を発出し、2035年までに次期戦闘機を国際共同開発することを発表した。
⑤2022年12月16日、岸田内閣は、安全保障関連3文書を閣議決定した。
防衛装備品の海外移転については、「安全保障上意義が高い防衛装備移転や国際共同開発を幅広い分野で円滑に行うため、防衛装備移転三原則や運用指針を始めとする制度の見直しについて検討する」とした。
⑥2023年2月21日、自民党の有志議員は、防衛装備品の海外輸出を促進する議員連盟を設立した。
⑦2023年4月5日、政府は、「政府安全保障能力強化支援(OSA:Official Security Assistance)」の枠組みを創設した。
⑧2023年4月25日、与党国家安全保障戦略等に関する検討ワーキングチームが発足した。
⑨2023年6月7日、「防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律(略称:防衛生産基盤強化法)」が成立した。
この法律の狙いは、国の財政支援を通じて、防衛産業が生産する防衛装備品の海外輸出などを促進することである。
⑩2023年12月13日、与党ワーキングチームは、提言を取りまとめた。
⑪2023年12月14日、日・英・伊が共同開発している次期戦闘機の2035年の配備を目指し、3か国の防衛相は防衛省内で会談し、政府間機関「GIGO(ジャイゴ)」を設立するための条約に署名した。
⑫2023年12月22日、政府は、与党ワーキングチームの提言を受けて、国家安全保障会議および閣議において、「防衛装備移転三原則」および「防衛装備移転三原則の運用指針」を改定した。
主要な改定内容は次の通りである。
❶パートナー国が完成品を移転した第三国に対し、我が国から補用品(部品)や技術の直接移転を可能とする。
❷ライセンス生産の装備品の完成品も輸出可能とする。
❸戦闘機のエンジンや翼といった部品を含め部品は総じて輸出可能とする。
❹米国以外の外国軍隊に対しても修理等の役務の提供を可能とする。
❺5類型(救難、輸送、警戒、監視および掃海)にあてはまれば、殺傷能力のある武器を搭載したまま輸出可能とする。
❻国際法違反の侵略などを受けている国に対して、防弾チョッキなど殺傷能力のない自衛隊の装備品を輸出可能とする。
⑬2024年3月5日、岸田首相は参議院予算員会において、英国、イタリアと共同開発を進めている次期戦闘機の第三国への輸出をめぐり、日本だけ輸出できなければ、パートナー国としてふさわしくないと国際的に認識され日本の防衛に支障を来すとして、輸出の必要性を述べた。
⑭2024年3月26日、政府は、「グローバル戦闘航空プログラムに係る完成品の我が国からパートナー国以外の国に対する移転について」の国家安全保障会議決定および閣議決定、並びに「防衛装備移転三原則の運用指針」の改定を行った。
⑮2024年11月25日、豪州のリチャード・マールズ副首相兼国防相は、海軍が導入を計画する新型汎用フリゲート艦の共同開発相手の最終候補として4か国の中から日本とドイツに絞り込んだと正式に発表した。
⑯2024年12月13日、防衛省は、豪州海軍が導入を計画する次期フリゲート艦を巡り、共同開発相手として指名を獲得するための官民合同推進委員会の初会合を開催した。
⑰2025年1月7日、インドネシアを訪問中の中谷元・防衛相は、シャフリ・シャムスディン国防相と会談し、艦艇の共同開発を巡り協議した。
両政府は数年前から協議してきたが、ジョコ・ウィドド前政権が多大な資金を投じて首都移転を進め、交渉は足踏み状態となっていた。