参政党に際立つ、人に夢を見させるテクニック

雨宮:参政党の特徴ですが、政治初心者でも入党できる雰囲気をうまく作っています。各地でタウンミーティングや講演会を開催して、気軽に参加できる雰囲気を作り、スタッフとして参加してもらうことで「自分は大きな計画に関わっている組織の一員」という感覚を持たせるのです。

 参政党への参画方法については無料のサポーターから一般党員、運営党員まで、さまざまなポジションや会費の区分けがあります。上に行くほどやれることが増え、その先に自分が立候補して議員になる道がある。立候補まで含めて、参政党内でのステップアップ方法をイメージしやすい工夫がされています。

 こうすることで、毎日出勤して9時から5時まで働くという、普通の人生とは異なる人生を送ることができると思わせる。

 ここがポイントです。マルチ商法や情報商材などの勧誘の際にも同じような謳い文句を使うことが少なくありませんが、今の日本人は、仕事の内容も含め、労働のあり方に満足していません。そこで「自由に働ける」「議員になれる」といった夢を見せる。

 参政党は昨年10月の衆院選で、比例3議席を獲得しましたが、中には政治経験のない主婦もいます。実際にこのような実績を出しており、支持者に「今の人生を捨てて新しい自分になれるのではないか」と希望を持たせています。企業社会から離れたところに救いがあるという筋立てはうまいと思います。

 そういう人たちを集めるための大規模集会を開くことも参政党は上手です。グッズも売り、「イチ、ニ、参政党!」という参政党コールも使っていて、人を集めて一体感を醸成し、夢を見せるテクニックをうまく使っています。

参政党の神谷代表(写真:共同通信社)参政党の神谷代表(写真:共同通信社)

──2016年の米大統領選でトランプを勝たせ、第一次トランプ政権で首席戦略官に指名されたスティーブ・バノンについて、彼があるオンラインゲーム関連の会社に参画した経験が大衆心理を動かすノウハウを得る一つの要因になったのではないか、と書かれています。

雨宮:彼はオンラインゲーム事業そのものをやっていたのではなく、ゲーム内通貨を売買するリアルマネートレード事業に参画していました。ゲーム内の通貨を、現実世界のお金と交換するサイトがあり、その事業に2005年頃から関わっていたのです。

 主に扱っていたのは「ワールド・オブ・ウォークラフト」というファンタジー系のオンラインゲームです。