安い米国産原油の恩恵を受けられていない
日本の原油輸入の中東依存度は95%を超えている。元売り企業が安価な原油調達に努めてきた結果だが、最近、中東産原油は割安ではなく、むしろ、割高になっている。
中東産油国が原油価格の安定を目的とした減産を実施しているため、品質の良い米国産原油の方が安くなっているからだ。価格差はバレル当たり4ドルにまで広がっている。
このことにいち早く注目したのは韓国企業だ。政府の支援も功を奏して米国産原油の輸入量は日量約50万バレルに拡大している。原油の調達コストを下げるとともに、中東依存度も70%程度にまで低下させることに成功している。
これに対し、中東産原油を処理することに適した設備を多く保有する日本企業の対応は消極的であり、割安となった米国産原油の恩恵を享受できていない。さらに、情勢が不安定化する中東産原油の供給途絶に最も深刻な影響を受ける構図のままだ。
ガソリン価格の安定のためには今後、原油調達の最適化を図る政策も併せて実施していくことが必要なのではないだろうか。
藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。