行政にしかできない仕事とは何なのか?

──改めての確認ですが、そもそもの問題意識としては、市の財源が縮小していく中、行政サービスを維持するために行政サービスを住民に委譲していこうとしているという理解でいいでしょうか。

仲川:はい。その認識で間違いありません。ただ、この話には両論あって、「行政では維持できないので住民の方々にお願いします」と言うと、冷たい感じがしますよね。もちろん、行政コストは下がればいいですけど、コストを下げて終わりではなく、新しいチャンスを作るきっかけにしたいと思っています。

 例えば、年間300万円でも浮けば、その資金を地域の活性化のために使うなど、地域の再投資に向けていく。

 正直な話、資源ゴミの収集は160万円、生ゴミを含む燃えるゴミの収集でも600万円と、金額としては比較的少額です。でも、東部地域におけるバス事業には億単位の資金がかかっています。もしこの部分を見直すことができれば、大きなインパクトがあります。ゴミにしても、大和高原全体で見れば、かなりの金額になる。

 こうしたゴミやコミュニティバス、その他の地域密着サービスや地域の施設の指定管理などを組み合わせていけば、売上高で数億円程度のLocal Coopを作ることはできます。それだけの売り上げが立てば、従業員を雇うことも可能でしょう。委託する金額は直営のころよりも下がりますので、奈良市にとってもメリットは大きい。

 これまでは、一人の人間が一つの仕事をしてきましたが、将来のLocal Coopでは、ゴミを収集した後にコミュニティバスを運転したり、普段は農業をしている人が朝だけゴミ収集を担当したり、地域の人材の効果的な活用が可能になるかもしれません。

 今検討しているのは、月ヶ瀬地区にある温泉施設の管理運営をLocal Coopに任せられないかということ。将来は幼児教育施設の運営もLocal Coopに任せていきたい。「行政しかできないものは何か」と突き詰めるとけっこう限られると思うので、それを突き詰めていきたい。

──今おっしゃった行政にしかできないこととはなんでしょうか。

仲川:今の今で言えば、例えば、生活保護の各種扶助などは行政にしかできない仕事です。ただ、本当にできないかというと、将来的な可能性はゼロではないと思っています。

 あとは税金。税金の徴収も行政の重要な役割です。ただ、これもあまり言うと怒られますが、日本の税制から切り離した地域を作りたいと思っているんですよ。

Local Coopを進める奈良市の仲川げん市長Local Coopを進める奈良市の仲川げん市長