財源問題で教育支出が増えることはない
松原:貸与型の奨学金は返済が猶予されることはあっても、一般的に減額されることはまずありません。
JASSOは返済されたお金を次の世代の奨学金としてプールしている、としっかりと返済されることの重要性を説明しています。政府から(返済できない人のための)予算がつく、といった未来は予想しづらいです。財源の問題がありますから。
アメリカとイギリスでは、政府が返済できなかった人に向けた公的補填を実行しているので、セーフティーネットの拡充を日本も議論すべきだと思います。
──高等教育の議論でよく聞くのがその「財源論」です。経済協力開発機構(OECD)の統計でも、日本は高等教育費の公的支出の割合が他国と比較して低いと指摘されています。
松原:少子高齢化で社会保障関連の支出が膨れ上がっていることに加えて、基本的に日本の教育行政は「平等性」を強く打ち出す傾向にあることから、高等教育に対する予算が劇的に増えるとは今後も考えづらいと思います。
「平等性」とは、「お金がないから大学に行けない/そもそも高等教育を受けられるだけのキャパシティが家庭にない」子どもたちをまず救おうという発想です。大学に通う学生の大部分を占める世帯年収1000万程度の家庭の負担を減らそうという機運は高まらないでしょう。
──1000万円程度の収入があっても、首都圏に家を持ち住宅ローンを組んでいれば、大学の学費を捻出するのが難しい家庭も多いのでは? まして、この物価高で、将来不安は高まる一方です。