(舛添 要一:国際政治学者)
1月20日の大統領就任を前にして、ドナルド・トランプの暴言・暴走が止まらない。グリーンランドをアメリカ領にする、パナマ運河の管理権をアメリカが取り戻す、「メキシコ湾」の名称を「アメリカ湾」にする、など言いたい放題である。
この発言の真意はどこにあるのか。また、このトランプの傍若無人ぶりにブレーキをかけることはできるのか。
「グリーンランドは売り物じゃない」
トランプの発言の背景にあるのは、これからの世界をめぐる覇権争いである。とりわけ、中国との熾烈な争いが問題であり、世界中で米中間の陣取り合戦が繰り広げられている。
グリーンランドについては、トランプは、その周辺で中国やロシアが活動を活発化させていると述べ、国家安全保障上、アメリカが所有する必要があると強調した。
そして、地球温暖化と住民の独立志向がトランプの領有欲を刺激している。
地球温暖化は国際政治にも様々な問題を投げかけているが、北極海の氷が溶けて、砕氷船でなくても航行可能になってきている。そのため、北極海航路の重要性が増している。そして、その航路の真ん中にあるグリーンランドの戦略的価値が高まっている。
さらに、地球温暖化によって、凍土が緩み、レアアースなどの地下資源の採掘も可能になっており、注目されている。中国やロシアの触手が伸びていることを、トランプは懸念している。
グリーンランドは、1953年までデンマークの植民地であったが、1979年に自治領となり、グリーンランド議会と住民投票の決定によって、独立することが可能となっている。そこで、独立した後のグリーンランドと協議する道もトランプは考えているようである。