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若い兵士同士の会話に学部長が出てくるジョーク、あなたは意味がわかるだろうか(写真:Anton Brehov/Shutterstock)若い兵士同士の会話に学部長が出てくるジョーク、あなたは意味がわかるだろうか(写真:Anton Brehov/Shutterstock)

(文:徳永勇樹)

ロシアとイスラエルは「戦争犯罪」を指摘されながら、なお戦争を続けている。日本人にはロシア人とイスラエル人を理解できるだろうか。現地のジョークは、時にその国の行動や、独特の論理の理解を助ける。完全な理解は難しくても、完全には理解できないと認識することが、理解の第一歩になるかもしれない。

 ロシアで新しく人と出会い少し仲良くなると、しばしば「アネクドートは知っているか」と聞かれる。アネクドートとは、要はロシアのジョークである。

 名越健郎氏によれば、〈「アネクドート」の語源は、ギリシャ語の「アネクドトス(地下出版)」から来ており、帝政時代からロシアの伝統でした。旧ソ連のスターリン時代には、政治小話を口にしただけで逮捕され、収容所送りになった記録もあります。しかし、アネクドートは社会主義の矛盾や抑圧を温床として、旧ソ連・東欧圏で異常な発展を遂げました。庶民の不満や憂さを晴らし、現実を諦観する批判精神が、ソ連邦を崩壊に追い込む原動力になったのかもしれません〉(『ジョークで読む世界ウラ事情』名越健郎)とある。

 アネクドートは外国人にとって難解である。言語だけでなくロシア・旧ソ連圏の文化や歴史を知らなければ理解ができない、いわば「文化の総合格闘技」だからだ。その意味で、アネクドートは、ロシア語を学ぶ外国人の登竜門であり、ロシア文化のラスボスのように思える。

 筆者は、そのわかりづらさからこれまでアネクドートの学習から逃げていたのだが、コロナ禍でアゼルバイジャン人の友人と同居した際に、暇つぶしにと彼からアネクドートの解説指導を受ける機会があった。最初はチンプンカンプンだったのだが、徐々に自分でも面白いものを発掘できるようになり、最後は自作のアネクドートを披露して友人を笑わせていた。正確には数えていないが、これまで5000以上のアネクドートを読み込んだと思う。

若い兵士と学部長にどういう関係が?

 アネクドートは世の中に無数にあり、政治、経済、宗教、民族事情といった固い話から、軍隊生活、大学、異性、映画など日常生活の様々なテーマまで守備範囲とする。直近数年は時世を反映してか、新型コロナやウクライナ関係の話が増えているようだ。それだけ多くのアネクドートが存在するので、面白いものとそうではないものは玉石混淆で、外国人も笑えるものもあれば、ネイティブのロシア語話者にとっても難解なものもある。ここでは、わかかりやすいものとわかりづらいものをそれぞれ筆者が選んで紹介する。

参考:https://www.anekdot.ru/tags/

①2人の友人(女性)が話しています:
「なぜそんなに落ち込んでいるの?」1人目の女性が2人目の女性に尋ねた。
「家の管理人のラリーサが私を馬鹿と呼んだの」と2人目の女性が言った。
「心配しないで」と1人目の女性が言った。「ラリーサは自分の意見を持ってなくて、他人の意見を鵜呑みにしているだけよ」

 これは、相手に同情するふりをして、間接的にお前は馬鹿だと言っているジョークだ。比較的わかりやすいと思うが、では次のジョークはどうだろうか。

②2人の若い兵士が話しています。
―中尉をからかいましょう。
―でも、もう学部長をからかっただろう。

 これをロシア人に聞かせるとすぐにクスクス笑いだす。内容については後ほど解説したい。

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