カネのために性を売るのは卑しいことか
娼妓には階級があり、代価による区別、異名等の名称にはいくつかの種類がある。
例えば、「身分的な区分」では公娼、私娼、密娼、準娼等の分類があり、「場所的な区分」では街娼、水上娼、駅妓、土娼がある。
その活動形態としては集娼、散娼、移動娼に分類される。
娼婦の異称に「道の者」との古名があり、土姑、駅姑など街道で旅する客を相手に伽をしたのが、娼家と娼婦の源流といわれる。
鎌倉時代以前では、セックスの代償も金銭に限らず絹や米、麦でも受け取っていたが、やがて貨幣との等価交換が前提となった。
室町時代になると市中の路地に店を構えた遊女・辻子君が一角に集められるなど、初めて売春婦の大規模一極集中化の様相を見せる。
諸国を周り宴にて歌を詠み、管弦や音曲を披露した遊行女婦(うかれめ)。
流行歌・今様や、和漢の名句を歌い舞う白拍子。
歌に合わせて人形を舞わる傀儡(ぐくつ)師。
いずれも女性らは、単なる性欲の発散を目的とした娼婦とは異なる、芸の質が高く、才知にも長けた女性たちであった。
しかし、その多くが「歌舞音曲を演ずる」といった、いわゆる「遊び」を超えた交接、つまりセックスを目的とした接待婦という、時代の流れの中に組み込まれていく。
だが、そんな女たちの高い品格や知性、教養や研鑽に日々励む向上心は、江戸遊郭の高級遊女・花魁へと引き継がれることになる。