古代エジプトでも行なわれた売春

 世界の売春を紐解けば宗教的売春、接待的売春など利益よりも、奉仕的な要素が伴うものもあるが、婚姻外の性的な誘惑は、妻帯者にとっては家庭崩壊や社会的制裁を受けかねないなど、今も昔も災いの種になりうる。

 エジプトの墓や絵画には全時代を通じて、母と子の姿が描かれている。 その理由として、女性の性的役割が厳しく抑えられていたことによる。

 女性に在り方には基本的に2つの道しかなかった。

 一つの道は善良な女性、すなわち妻や母、あるいは処女と巫女。

 もう一つの道は、女の色気が滴り落ちる艶容な情婦・売春婦である。

 古代エジプトにおいても売春は広く行なわれており、トリノの通称・エロティック・パピルスには、純朴な男が売春宿で繰り広げられる醜態が精緻に描かれている。

 その内容は男がエロティックな女の虜となり、支配されていくといったものだ。

 魅力的な女性の積極的な性的な誘いと、その魅惑的な手管は、男性を支配する一つの手段ともなり、そうした誘惑に男が自制し抗うことは、昔も今も極めて困難なことといえよう。

 エジプトの賢者は妻ある男性にこう諭している。

「見知らぬ女、町で見かけない女に出くわした時には気をつけよ」

「彼女に目配せをするなかれ」

「彼女と肉の交わりをするなかれ」

「彼女は深き水の淵である。その流れのねじれを男たちは知らず」

「夫が側におらぬ女は、知る人のおらぬ時、汝にこう告げる」

「これから人知れず、悦びに身を任せませう」

 男は艶やかな女性の輝く肢体を前にすれば、自分自身を見失い痴れ者のようになるのは自然なことだ。

 だが、仮にひとかけらの夢らしきものを手に入れたとしても、その歓びが続くとは限らない。

 誡めは現代にも通じている。