その配慮、かえって不安を与えてませんか?

 それは、「○○のことで教えてほしいから、手が空いたら(今やっている仕事が終わったら)、ちょっと来てくれる?」というような言い方です。

 まず簡単でいいので、「○○のことで」と内容を伝えるのです。上司から呼ばれたら、たいていの人はその内容が気になるものです。どうしても今やっている業務から手が離せない場合、頭の中で「○○のことか~」とだいたいの予想ができれば安心して今の業務に専念できます。

 そして「手が空いたら〜」というように、タイミングの選択肢を与えることも大事です。

 私は以前、朝、出勤打刻をした直後に、校長から「松下先生、放課後、ちょっと聞きたいことがあるからいい?」とだけ言われたことがあります。

 その日、1~6時間目の授業が終わって放課後になるまで、ずっと不安で頭から離れませんでした。(え!?どうして放課後?放課後にじっくり時間をかけないといけないこと?何かやらかしてしまったかな?)とどんどん不安が大きくなりました。

 そして、いざ放課後、校長室のドアをノックしました。

「校長先生、遅くなって申し訳ありません。朝、お声がけいただいていた件で参りました」

 すると返ってきたのは驚くべき言葉でした。

「え?何のこと?そんなこと言ったかな?…あっ!そうそう…」

 忘れてしまっていたのです…。「忘れてしまうほどの用件なのに、あの余計な心配は何だったのか…」と一瞬、呆然としました。

 なぜ校長は、朝すぐにではなく、授業と授業の合間の休み時間や昼休みでもなく、放課後に時間を設定したのでしょうか。

 その理由は、私に気を遣ったからでした。「出勤直後は、学校の子どもたちが登校してくる時間帯で、担任の松下先生は忙しいだろう」「休憩時間や昼休みの教室の子どもたちのことで忙しいだろう」と私に配慮していたのです。

 もし職場の後輩や部下に、何か用があって、話しかけるときは、簡単でいいので内容について伝えることをおすすめします。

 その際、もうひとつ考えるべき点があります。それは「個室に呼んで話すべき内容かどうか」です。