ラスベガスのテスラ車爆発事件が暗示する2025年の幕開け
移民政策ではマスクがバノンに勝利、でも外国人からの搾取では同根
2025.1.3(金)
高濱 賛
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バノンとの移民論争ではマスクに軍配
マスク氏は、トランプ政権の最優先政策である移民問題をめぐり、MAGA(トランピズム運動)の中心的人物、ステーブ・バノン元大統領首席戦略官(71)*1と真っ向から対立。
*1=バノン氏は元々、民主党員だったが、ロナルド・レーガン第40代大統領に惚れこみ、保守派に転じた。その後主幹を務めた保守系ブライトバート・ニュースを通じて2016年大統領選ではトランプ氏を支援、トランプ第1期政権では上級顧問や首席戦略官を務めた。ホワイトハウス内の権力闘争に敗れ辞任。2021年1月の議会乱入事件介在容疑で下院特別委員会からの召喚要求を蹴って、議会侮辱罪で4か月の禁固刑を受けた。2024年の大統領選では再びトランプ氏を支援し、特にメキシコ国境問題で論陣を張った。左派系メディアは同氏を白人至上主義者、女性蔑視・差別主義者、外国人嫌悪主義者というレッテルを張っている。
(Steve Bannon | Biography, Trump, Imprisonment, & Facts)
マスク氏は、トランプ政権が国外追放する不法移民のうちシリコンバレーなどで働く「高度熟練労働者」(H-1Bビザ保持者)*2を除外すべきだと主張。すべての不法移民の国外追放を唱えるバノン氏と「戦争状態」にある。
*2=データ研究機関「Statista」によれば、「高度熟練労働者」(Skilled Workers)は、2020年段階で6万5000人。これに米大学で修士号、博士号を取得した外国人2万人を合わせると8万5000人。そのうち72%(7万2438人)はインド国籍(日本人は2054人)。企業別にみると、グーグルが1万5 77人、アマゾンが9416人、IBMが2237人、マイクロソフトは6041人となっている。
グーグル、IBM、マイクロソフトなどのCEOはすべてインド系だ。
(Number of H-1B visas issued in U.S., by countries with the most recipients 2011 )
トランプ氏は、この「戦争」ではすでにマスク氏に軍配を上げており、第1期政権を支え、再選のために尽くしてきた忠臣たちを切って捨てた格好になっている。
マスク氏は、大統領選後半にトランプ氏に急接近し、選挙資金2億5000万ドル(約395億円)をぽんと出した。
また自身が所有するXを使って大々的な選挙キャンペーンを展開した。
トランプ氏にとっては、マスク氏のカネとXが再選に役立ったことは言うまでもない。
その論功という面もあって政権では要職を与えるわけだが、それ以上に第2期政権ではマスク氏の発想力、行動力、そしてマスク氏を取り巻くインド系、南アフリカ系をはじめとする幅広い人脈が不可欠と見た「動物本能的な勘」が働いたとみるべきだ。
マスク氏は、新政権では連邦政府の無駄を徹底的になくすために新設される「政府効率化省」(DOGE)の長官に指名されており、トランプ政権の中核になる。
一方、同氏はテスラ、X、スペースX、スターリンクを経営、地上から宇宙まで動かす「テクノ億万長者」として政治を睥睨する「自信」(驕り?)の表れか、元旦早々、フライング。
(欧州の極右との連携を目論むマスク氏の高等戦術なのか、どうかは目下不明だ)
政治情勢が不安定なドイツに触れ、「ドイツを救えるのは(極右政党の)『AfD=ドイツの為の選択』だ」とXに投稿、ドイツ政府に「内政干渉だ」と激しく非難されている。