壁面や待避所を活用した解説掲示は“トンネル内博物館”
駅から甲府盆地を正面に見て線路沿いに左へ進むと、長らく中央本線で活躍していたEF64形電気機関車がきれいな姿で静態保存されている。旧国鉄が勾配線区間用に開発した機関車で、昭和から平成にかけて中央本線をはじめ日本の物流輸送に大きく貢献した。
その先の遊歩道の階段を上がると大日影トンネルの入口が見える。現在の下り線の新大日影第二トンネル(長さ1415m)の巨大なコンクリート製のポータル(入口)の隣に、古式蒼然とした煉瓦と切石造りの旧・大日影トンネルが並ぶ。タイミングが合えば特急列車が新トンネルから勢いよく走り出てくる瞬間が見られる。
高さ4.9m、幅3.5~3.7mのポータルの両サイドにはトンネルの威容を表すように壁柱(へきちゅう)が設けられている。切石が煉瓦を挟むように積み上げられ、意匠としても珍しい。アーチ環の迫石(せりいし)は斧の形に似ており、碓氷峠など同時代のトンネルでも見られる造形だ。
トンネルに入ってみると、当時のレールがそのままの姿で残されている。両脇の通路は運動靴でも歩行可能だ。
驚いたのは、内部の煉瓦の側壁や保線用の待避所のスペースを活用し、トンネル内に数多く残る鉄道標識や当時の時代背景についての解説が大小のパネルで掲示されていることだ。
鉄道の知識がなくてもわかりやすく、さながら“トンネル内博物館”の様相である。また、一定間隔ごとに白色のLED照明があるので掲示が読みやすく、暗闇に対する恐怖感を軽減する効果もある。